帰国して周囲から「丸くなった」 “一匹狼”福留孝介氏を変えた米国での5年間
若手選手の考え方を理解しようという好奇心「自分の選手生命も…」
レギュラーの座を易々とは明け渡さず、高い壁となって立ちはだかることで、若手選手たちの成長を期待した。
「俺が試合に出ている以上、試合に出たいなら俺を落とさないといけない。だったら何をすればいいのか、という話。俺以上に練習をするのか、練習量は少ないかもしれないけど自分に合った方法を探すのか。若い選手にとって俺を超えることを目標に、考えたり変わったりするきっかけになればいいなと思っていましたね」
一匹狼でいるのではなく、若手選手との交流から生まれた刺激や発見は、福留氏にとってもプラスとなった。「一匹狼のままだったら、アメリカの5年で終わっていたかもしれない。でも、若い選手と接して、考えを理解しようとしたことで、自分の選手生命も何年か延びたのかもね」と言いながら、嬉しそうに目尻を下げる。
自身が駆け出しだった頃、先輩から食事の誘いを受けると「返事は『ハイ』しかなかった」と懐かしそうに笑う。半ば強制的な付き合いもあったが、先輩と食事の場だからできた話、受けたアドバイスは数多い。積み重ねた経験、知識、技術を惜しみなく伝えたいという思いもあり、福留氏も後輩を食事に誘ったが、その方法は今風だ。
「今は試合でミスしてヘコんでいそうだと思ったら、本人に『どうだ、今日は外に出ていく元気あるか?』って聞きますよ。『いや、ちょっとないです』となったら、『そうか、じゃまた今度行こうな』という感じ。そういうところが多分、角が取れて丸くなったって言われる理由かな」
一匹狼から、良き理解者へ。米国での5年は人としての深みを増す時間になったようだ。
(佐藤直子 / Naoko Sato)