前田智徳氏の殺気立つ練習は「入っちゃいけない」 強い“赤ヘル”の壮絶ライバル物語

野球評論家・野村謙二郎氏【写真:本人提供】
野球評論家・野村謙二郎氏【写真:本人提供】

前田智徳氏が発した「そこには入っちゃいけないオーラ」

 いったんゾーンに入ってしまったら、それを追求しないと気持ちが悪かったという。「前田なんか練習が終わって、1人で2時間くらいマシンを相手にブツブツ言いながら打ったりしていたけど、そこには入っちゃいけないオーラを出していたからね」。野村氏も夜中に目覚めてバットを振り出したことがあったという。「何かひらめいて、ベッドの上でタイミングを取って、あっ、こんな感じかって庭に出て、そこでずっとバットを振って朝になっていたとかね」。

 そんな猛烈なライバル物語と並行しての壮絶な怪我との戦い。1996年の左足首骨折に関して「それまでも体が張ったとか、筋肉痛とか、首が痛いとかはあったけど、あの時から一気に怪我が増えた」と言うように、それ以来、右太腿、左太腿、左足膝裏、股関節……と絶えず、どこかを痛めていた感じだった。それこそ万全な日がなかったといっていい。2000安打は、そんな中でまさに満身創痍での達成だったわけだ。

 野村氏はその偉業を成し遂げた2005年にユニホームを脱いだが、現役時代の思い出はまだまだ語り尽くせない。いろんな投手と数々の名勝負を繰り広げたし、何と野球と他種目との“二刀流生活”を口にしたこともあった。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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