菊池涼介じゃなくても「候補は他にもいた」 オーナーも混迷…ドラフトの“分かれ道”
高信二コーチの進言で二塁にコンバートされた菊池涼
ショートだった菊池涼をセカンドに推薦したのは当時の高信二野手チーフコーチだったという。「高の発想は『野村さん、菊池はショートもできる、守備範囲の広さは申し分ないし、肩も強いけど、5-4-3、6-4-3、1-4-3のダブルプレーを考えたときに、ダブルプレーって相手のチャンスを摘む一番の攻撃的な守備だから、菊池のあのスローイングは、セカンドにいる方が絶対いいですよ』って。それに、まぁそうだなっていう話になった」。
菊池涼も期待に応えた。それまでのレギュラー二塁手だった東出輝裕の怪我もあって、チャンスをつかんだ。「本当に彼は伸びたね。体も強いしね。東出の怪我もあったけど、そういう運も持っているし、ずっと継続してやってくれたのが彼の能力だと思う」と野村氏はうなる。日増しに実力をつけていく吸収力の凄さには驚くばかりだったそうで「10年連続ゴールデングラブなんてね、セカンドで出てこないと思うよ、そんなに」と称賛しきりだ。
時は流れ、2023年シーズンから、野村氏にとって駒沢大学の後輩でもある新井貴浩新監督が広島を指揮する。監督時代は阪神の選手だったが、現役時代には、ともにカープのユニホームを着て戦っている。新井氏の1999年の広島入団時から、2005年に本塁打王のタイトルを獲得するまでの経緯も見てきた。当然、思い入れはある。「入ってきた時は、こいつ大丈夫かな、相当頑張らないと駄目だなと心配になったけどね」。先輩として、ある一件では雷を落としたこともあったという。
(山口真司 / Shinji Yamaguchi)