ノムさんから「何しとるんだ!」 “鈍感”なドラ1がクビを覚悟した指揮官のカミナリ

藤田学氏【写真:山口真司】
藤田学氏【写真:山口真司】

1年目の春に肩を故障し投げられず…野村監督からの言葉に「クビになるのか」

 それでも焦ることはなかった。「ちょっと鈍感な部分もあったんじゃないかと思います」と言い、実際、スタートは順調だった。「1年目は5月までに2軍で5勝くらいしたんです」。コーチからは「5勝したら1軍から声がかかるかもしれないぞ」と言われていた。だが、そこから暗転した。「そろそろ1軍かなって思った時に肩を痛めてしまった。1年目シーズンはその後、投げられずに終わってしまったんです」。

 肩を故障してからは完全別メニューになった。「(2軍の)みんなが練習に出てくる前にグラウンドに行ってランニングとかをやって、みんなが来たらプールに移動してリハビリ。そういう日々でした」。その間に寮で野村克也監督に遭遇したことがあった。「野村さんに『何しとるんだ!』って言われて『肩を痛めまして』って答えたら『じゃあ、契約金返してもらわなきゃいかんな』って。あの時はクビになるのかと思いましたね」と明かした。

 野村発言で「必死になった」藤田氏は、肩が治った2年目、キャンプ、オープン戦と1軍に食らいついた。だが「最後の最後に2軍に落とされた」という。そこからは1軍に上がりたいの一心。2軍戦で好投を続けた。勝ち星も量産した。しかし、呼ばれなかった。説明もなかった。「何でだろう、何でだろう」。そう思うばかりで、時は流れていった。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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