「世界一楽しく」→根性野球に“改革”断行 少年野球のカリスマ・辻正人監督の新たな挑戦

多賀少年野球クラブ・辻正人監督【写真:編集部】
多賀少年野球クラブ・辻正人監督【写真:編集部】

練習時間は半日、ランニングメニューは増やさず持久力強化へ

 昨夏のチームは、マクドナルド・トーナメントで連覇した時のチームよりも個々の能力は上だったという。だからこそ、辻監督は大会が開催される8月を見据えて、選手に怪我をさせない調整を進めていた。コンディションが万全であれば日本一になれる自信があった。

 だが、結果は2回戦敗退。1回戦は勝利したものの、選手は本来の動きとは程遠かったという。辻監督は「試合前のウォーミングアップで選手は疲れていました。炎天下で1試合を戦い抜く持久力、連戦に耐える持久力が足りませんでした」と回想する。そして、こう続ける。

「最終回でも打者なら最速のスイングスピード、投手なら最速の球速を出せる力が必要になります。普段120キロのスイングスピードがある選手が最終回に100キロしか出なければ、スイングスピードが120キロの選手とは言えないんです」

 自分たちのチームとは対照的に、相手の選手は最終回でもパフォーマンスが落ちなかったという。辻監督は「相手は基礎トレーニングをしっかりやって、選手は長時間の練習に耐えてきたと思います。うちの選手はイニングを重ねるごとにどんどん力が落ちるのに対し、相手選手は最後まで落ちませんでした」と脱帽する。

 辻監督は「長時間練習は当り前」という野球界の常識を打破し、全国大会常連のチームを作り上げている。平日は完全オフの日をつくり、練習日も参加は自由。土日祝日も丸一日練習することはない。効率的、効果的な練習方法を追求して結果を残してきたにもかかわらず、選手の持久力を強化するために再び長時間練習に戻るのか。笑顔で答える。

「練習時間は半日のまま、持久力を鍛えます。持久力を養うために走る練習やトレーニングの時間をつくろうとは思っていません」

指導者は強制しない 選手自ら厳しさを望む「令和の根性野球」

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