実は3種類ある「二塁牽制」 元名手が伝授…走者を刺すために欠かせぬ“エサまき”

「餌まき」こそショートの“腕の見せどころ”

 二塁走者を刺すためのポイントはどこにあるか。大引さんは「餌まき」をキーワードに挙げる。「二塁走者の心理として、ショートが三遊間に開いた時にリードを広げます。それを逆手に取って、開いた瞬間にベースに走り込むのはひとつの手です。あえて、走者の後ろでグラブを叩いて、走者から離れたことをアピールするのも効果的です」。

 コーチャーの声も生かせるという。ショートが離れると「離れた!」「(牽制)ないぞ!」と声が飛ぶが、この瞬間にベースに入る。では、バッテリーとのサインはどのようにやり取りしているのか。「投球前に『次に牽制』と私がサインを送ることもあれば、セットに入ったあとに『投げてこい!』と簡単なフラッシュでサインを出すこともあります」。

 約束事として、春季キャンプで「投手が走者を見て、顔をホームに向けたあと、1秒で二塁牽制」といった“合わせ”を繰り返すという。ショートの大引さんは、投手が本塁に顔を向けたタイミングで二塁ベースに走り込む。「年間で5パターンぐらい使い分けています。ショートが二塁走者を追い越した時(二塁ベース寄りにショートが近づく)に、キャッチャーがミットを倒して、けん制するやり方もあります。これは、バッテリーのサイン交換中によく使います」。

 球場でプロ野球を見る機会があれば、走者二塁時のショートの動きに注目を。プロの「餌まき」を学んでみてほしい。

(大利実 / Minoru Ohtoshi)

○著者プロフィール
大利実(おおとし・みのる)1977年生まれ、神奈川県出身。大学卒業後、スポーツライターの事務所を経て、フリーライターに。中学・高校野球を中心にしたアマチュア野球の取材が主。著書に『高校野球継投論』(竹書房)、企画・構成に『コントロールの極意』(吉見一起著/竹書房)、『導く力-自走する集団作り-』(高松商・長尾健司著/竹書房)など。

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