野球全盛は今や昔「打ってから三塁に走る子も」 競技人口減…指導者が抱く危機感

兵庫県伊丹市「桜台ハンターズ」の幸地正直顧問【写真:橋本健吾】
兵庫県伊丹市「桜台ハンターズ」の幸地正直顧問【写真:橋本健吾】

巨人・中島らを輩出…兵庫・伊丹「桜台ハンターズ」で教える幸地正直顧問

 近年、野球人口の減少は顕著で、部員集めに悩みを抱える少年野球チームは多い。巨人・中島宏之内野手らを輩出した兵庫・伊丹市の少年軟式野球チーム「桜台ハンターズ」で過去に監督を務めるなど、35年間指導する幸地正直顧問は時代の変化を実感。野球未経験の子どもがチームに入ることも珍しくないといい、基本的な動きを根気よく伝え、ルール講座を実施するなどして魅力を伝えている。

 昔は公園や空き地で、野球などが当たり前のようにできた。近年は「ボール遊び禁止」「大声禁止」などで子どもの遊び場が減少。地上波による野球中継も激減し、現在はネット配信などに移行している。野球が身近な存在でなくなっている。

「昔はある程度、遊びでボールを投げたり、バットを振ったりすることが当たり前だった。今は経験が全くない子がチームに入って来ることも多い。長く指導者をしていますが、その変化は感じます。野球中継を見て、何となくルールを覚えることもなくなっている。打ってから三塁に走る子も本当にいます」

 真っさらな状態だからこそ、キャッチボール、バッティング、走塁など基本の動きを入部直後にしっかり教える。ルールに関しても、月に数回ホワイトボードを使って伝えるなど、試合に出場させるための準備を怠らない。

 部員も減少しており「今は当たり前に試合に出られる。全員にチャンスがあるのは素晴らしいことですが、競争意識がなくなってきている。上のレベルで野球を続けるなら必要な部分。そこを指導者が何とかしていかなといけない」と危機感を口にする。

 時代と共にレベルは上がっているが、野球人口は減少の一途をたどっている。少年野球は“入口”だけに「ここがしっかりしないと野球界の未来はなくなる。少年野球に関わる人は責任感を持たないといけない」。幸地顧問は67歳になった今でも、野球界を担う子どもたちと全力でぶつかっている。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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