突然の命令に「クビになるかも…」 帰国拒否も「お前、帰って来い」揺れたNPB復帰

中日復帰初登板でNPB初勝利…5勝0敗の好成績で優勝に貢献した

 それが午前中のこと。昼にはチームメートに別れの挨拶をし「もう彼らに会うことはないんだろうなって思った。ハグしたり、号泣だった」。夜にはロサンゼルスへ。そこで1泊して、次の日は日本に向かった。「あれは強行軍だったなぁ」。すさまじいスピードで進行した。

 久しぶりの日本。久しぶりの名古屋。12キロも太ったので、ドラゴンズのユニホームはピチピチだったが、それよりも何よりも、不安の方が先だった。「アメリカでの成績はたまたまだと思ってましたからね」。復帰後初登板は8月30日の広島戦(ナゴヤ球場)だった。3-4の5回表から3番手で登板し、2イニングを投げて、打者10人に1安打2三振、2四球、1失点。味方打線が6回裏に逆転し、プロ初勝利となった。

「今までの人生で一番、欲しいものが手に入った感覚。忘れられない。あの日は興奮して眠れなかったもんね。プロで勝った。あり得ない。4年間0勝のピッチャーがさ、プロで勝ったんですからね」。レジェンド左腕の記念すべき1勝目はこうして生まれた。自然と不安も消えていった。9月16日のヤクルト戦(神宮)でプロ初完投、初完封をマークするなど5勝0敗の成績で中日優勝に貢献した。勝つことはできなかったが、西武との日本シリーズでも第3戦に先発した。

「アメリカから帰ってきて、星野監督がいきなり先発させなかったのも僕にはよかったと思います」。アメリカのアイクさんには勝つたびに電話で報告した。1年前には考えられないことが次々と起きた。自信にもなった。だが、またまた試練が……。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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