ティーチングとコーチングの違いは? 選手の成長を大きく左右する“教えない指導”

自発性引き出すコーチング…選手は能動的に動いて成長

 例えば、少年野球で遅い球に対して泳いでしまう打者に対して「もっと待って打つように」とは伝えない。打席での様子をスマートフォンで撮影し、映像を見せながら「どうすれば遅い球を打てるようになる?」と質問する。すると、選手は自分で考えて「球を引き付ける」「自分の軸で回転して打つ」などの解決策を導き出す。阿久根さんは「コーチングは考えて工夫する環境をつくり、選手に自発的な行動を起こさせるためのコミュニケーションマインド」と表現する。

 正しいコーチングは選手の自発性を引き出し、創造性や積極性、個性や多様性へとつながるという。指導者から結果について怒られた選手は受動的になり、結果に至る経過を気にかけて承認する指導者と接する選手は能動的に動く。この差が、選手の成長の差として表れる。阿久根さんは「指導者には選手の話を否定せずに最後まで聴き、気持ちに共感することが必要です」と力を込めた。

 コーチングとは対極にある「一方的な指示命令型」の典型には、選手のタイプや価値観を見分けられず、誰にでも同じ方法で教えてしまう指導がある。さらに、自分のやり方を押し付け、過度に選手を管理する指導などを挙げた。こうした指導法が上達する楽しさを選手から奪い、野球離れの要因にもなっていると阿久根さんは指摘した。

 指導者が選手に及ぼす影響は小さくない。知識や経験の少ない小、中学生なら、なおさらだろう。コーチングに長けた指導者のもとで早い時期から考える力を身に付けた選手は、将来の可能性が広がる。

(間淳 / Jun Aida)

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