突然の日本代表入りに「えーってなった」 急成長で抜擢も…野茂らのレベルに自信喪失
野茂や与田の剛球に仰天「レベルが違う」
投手は野茂、与田剛(NTT東京)、潮崎哲也(松下電器)ら。捕手に古田敦也(トヨタ自動車)もいた。後にプロ野球で大活躍する面々の若かりし時代だが、実際、当時から、その片鱗を見せていた。「ジャパンで野茂や与田さんと同じブルペンに入った時、ちょっとレベルが違うなと思って、自信喪失しそうな時もあった。だって、2人ともすっごい球を投げていたから。うわぁっ、こりゃあすげぇところに入ったなって感じたからね」。
でも、そこでの経験は自信につながった。三菱重工広島の補強選手として出場した都市対抗では1回戦でNTT東京と激突。与田と投げ合って、2-1で勝利した。「お互い完投して、ソロホームランと2ランの差だけだった。相手は(NTTの)本社だったから、帰ったら机ないぞって言われたけどね」。この頃からプロの評価も上がり、一気にドラフト1位候補と言われ始めた。プロに行きたい気持ちも高まった。
しかし、母・江美子さんに反対された。「『性格的にもプロなんて、あんたは向いてない。せっかくNTTに入って、この先もおれるんやから。プロに行くな、行かんでくれ』ってね。プロで怪我でもしたらという心配の方が先だったと思う。その時はカープに入れるとも思っていないから、どこに行くかわからない、遠くに行くかもわからない。それもあったと思う」。母にそう言われると気持ちもまた揺らぐ。そんな中、今度はNTTの監督が説得してくれたという。「もう大丈夫。行かせてやってくれ」と。
そして、ドラフト前までに母の承諾を得た。「『あんたの夢を私が壊してもいけないだろうから、夢をずっと追いかけていたんだから、そうしなさい』って」。佐々岡氏はその言葉を決して忘れない。「カープ以外なら会社に残留する」とマスコミに話した。「(担当スカウトの)佐伯(和司)さんがホント、しょっちゅう、NTTに足を運んでくれたんです」。まさに相思相愛の関係で念願の広島入りとなったのだ。だが、今度はカープのブルペンで衝撃を受けた。
(山口真司 / Shinji Yamaguchi)