選抜Vの一因は「軸足の強化」 冬越えて劇的変身…元エースが実践した“右回り走”

軸足を鍛えるため右足スタート、右回りのダッシュを繰り返した

 例えば一塁走者が二塁へ盗塁を試みる際、進行方向の後ろとなる左足を蹴ってからスタートを切る。左回りが多い野球の動きに合わせるかのように、左向きからダッシュのスタートを繰り返してはいないだろうか。下窪さんは、あえて右を向き、右足を強く蹴ってダッシュを繰り返していたという。

「投げる時って右足を使ってプレートを蹴る。だから、ダッシュの時も右足を強く蹴ることを意識して、ピッチングの瞬発力につなげていました。右足を強く蹴ることを意識してやっていたら、プレートも強く蹴ることができて、結果的にボールも前で離せるようになりました」

 冬の間の走り込みが実り、選抜大会では最速142キロの直球と「消える」とまで称されたスライダーを操り、全5試合完投。553球を投げ抜き、鹿児島県初の甲子園優勝投手となった。その称号は、今もなお下窪さん一人だけのものだ。

「冬の間は実戦もできないし、投げ込みとかもあまりできないから、どれだけトレーニングをしたかで春の結果が変わると思います。(選抜大会は)自分の野球人生のスタートライン。全国で自分がどれだけ通用するかを試したかったし、他の高校生よりも、練習したという自負もあった。それまでやってきたことが間違いじゃなかったって、そう思えた大会でした」

 意識が変われば行動も、結果も変わってくる。時代が移り変わり、最新のトレーニング方法に変わろうとも、下窪さんの努力の過程は、高校球児の手本となる。

(内田勝治 / Katsuharu Uchida)

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