「一緒にやれる日を待つ」 ダルビッシュの“目配り”は世界へ…届けた「メッセージ」
ダルビッシュを侍のマウンドへ送り出したのは、日本ハムでの“盟友”たち
時間が巻き戻されたような気がした。パドレスのダルビッシュ有投手は、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を戦う日本代表に、宮崎市で行われた事前キャンプから合流した。ダルビッシュの剛球を受けるのは、ブルペン捕手を務める鶴岡慎也氏。さらに吉井理人、厚澤和幸の両コーチが投球を見守った。エースとして君臨した時代の、日本ハムの風景そのままだった。
宮崎キャンプでダルビッシュは、常に話題の中心にいた。日本選手の先陣を切って自らファンに歩み寄り、サインをする姿を見て“変化”を感じた。かつては、常にどこかピリピリした空気をまとっていたのに。宇田川優希投手(オリックス)が「チームになじめていない」と口にした直後には、音頭を取って投手会を「宇田川会」と呼んだ。空気をパッと一変させる機転を見せた。
ところが、大谷翔平投手が来日してからは、報道から姿が消えた。まるで“主役交代”を分かっているかのようだった。10日の日韓戦で先発マウンドに上がると、3回3失点。相手を圧倒する投球を期待した向きには、予想外の結果だったかもしれない。ただ、ブルペンからダルビッシュを送り出した厚澤コーチに聞くと、全く別の見方をしていた。
ダルビッシュは侍ジャパンのキャンプには2月から参加していたものの、メジャー所属選手への縛りがあったため、実戦に投げて調整することはできなかった。今季初の実戦が、注目度抜群の日韓戦という、あまりに特殊な日程をこなした。厚澤コーチも「難しい部分は正直あったと思うけど」という。ただ「ゲームへの入り方、集中力はすごかった」と続ける。