パンチ食らって鼻血も…まさかの「投げるやろ」 大乱闘直後、監督からの衝撃指令
三村監督から続投指令…ユニホーム着替えて投げ、勝利投手になった
クラークは佐々岡をつかまえ、ヘッドロックしたような状態で、そのまま首投げで1回転させて、グラウンドに叩きつけた。両軍選手がマウンド付近になだれ込んだ。「ああ、当ててしまったと思って下を向いた瞬間に、ドッドッドッって音がしたから、パッと見たら、もう(クラークが)目の前に来ていて、投げられて頭から、首から落ちて、下でパンチが入って鼻血がダーッと出て……」。救出された時、ユニホームは血で真っ赤だったという。
それでも続投した。「ベンチに戻ったらミムさん(三村監督)が一言。『投げるやろ(勝っているから)5回まで投げぇ』って。それでユニホームを着替えて、投げた。今ではあり得ないことだけどね」と佐々岡氏は苦笑する。「5回まで投げて勝ち投手にはなったけど、次の日は首が全く動かず、登録抹消になった」。やはり普通の状態では到底なかった。一方、退場となったクラークは制裁金30万円と1週間の出場停止処分を受けた。
まさかの故障だったが、佐々岡氏はムチ打ちの後遺症に苦しむことはなかったという。4月26日の巨人戦(広島)で復活の2勝目。それも2安打完封の見事なピッチングだった。さらにシーズン途中からは抑えに回ったのだから本当にタフだ。翌1995年も初の開幕投手を務めながら、同じく途中から抑えに配置転換。「僕はもうチームに貢献できれば、どこでもやりますという感じだったんでね」と事もなげに話すが、調整も含め、決して簡単ではなかったはず。それを普通にこなしたのもすごいところだろう。
(山口真司 / Shinji Yamaguchi)