パンチ食らって鼻血も…まさかの「投げるやろ」 大乱闘直後、監督からの衝撃指令|球界群像 佐々岡真司#7

広島で投手、監督として活躍した佐々岡真司氏【写真:山口真司】広島で投手、監督として活躍した佐々岡真司氏【写真:山口真司】

1994年、佐々岡真司氏はヤクルトのクラークに死球を与え大乱闘に

 血だらけになったユニホームを着替えてから、再びマウンドに上がった。体は万全であるわけがない。緊張と集中力でカバーして投げ続けた。そんな壮絶な経験したのが前広島監督で野球評論家の佐々岡真司氏だ。1994年4月13日。舞台は広島市民球場だった。気がついた時にはヤクルトの外国人選手ジェラルド・クラークが突進してきた。その後はもう“地獄絵図”。トレーナーに引きずり出されて、ようやく助かった状況だった。

 佐々岡氏はプロ1年目に13勝、2年目17勝、3年目12勝と3年連続2桁勝利をマークした。2年目はチームも優勝、自身は最多勝、最優秀防御率、リーグMVP、沢村賞と大活躍。順調なプロ生活といっていい。それがつまずいたのは4年目の1993年シーズンだ。結果は5勝17敗。「いいピッチングをすれば0-1とかで負けるし、1/3とか0/3でノックアウトを食らうこともあったし、ホント、歯車がかみ合わなかった」

 それでも山本浩二監督は2軍に落とさなかった。そのシーズンも183イニングを投げた。「普通、落としますよね。落としてほしかったもん。落としてくれって言ったような気もする、いやどうかな、言わなかったかな……」。指揮官の期待に応えられなくて、とにかく苦しかった。「つらかったですよ。逃げ出したいという気持ちもありました」。チームは最下位。山本監督は退任した。申し訳ない思いでいっぱいだった。

 グラウンドで血まみれになったのは、新監督に三村敏之氏が就任し、もう一度やり直しを誓った翌1994年の開幕3戦目のヤクルト戦(広島)だった。三村カープの本拠地開幕戦であり、佐々岡氏にとっても、そのシーズンの“開幕戦”。そこで“事件”は起きた。広島が3-1とリードして迎えた4回表2死一塁。投手・佐々岡の内角高めのボールが右手付近に当たり、そのまま倒れ込んだクラークは起き上がるや否や、ヘルメットを投げ捨て、猛烈な勢いでマウンドに向かった。

三村監督から続投指令…ユニホーム着替えて投げ、勝利投手になった

 クラークは佐々岡をつかまえ、ヘッドロックしたような状態で、そのまま首投げで1回転させて、グラウンドに叩きつけた。両軍選手がマウンド付近になだれ込んだ。「ああ、当ててしまったと思って下を向いた瞬間に、ドッドッドッって音がしたから、パッと見たら、もう(クラークが)目の前に来ていて、投げられて頭から、首から落ちて、下でパンチが入って鼻血がダーッと出て……」。救出された時、ユニホームは血で真っ赤だったという。

 それでも続投した。「ベンチに戻ったらミムさん(三村監督)が一言。『投げるやろ(勝っているから)5回まで投げぇ』って。それでユニホームを着替えて、投げた。今ではあり得ないことだけどね」と佐々岡氏は苦笑する。「5回まで投げて勝ち投手にはなったけど、次の日は首が全く動かず、登録抹消になった」。やはり普通の状態では到底なかった。一方、退場となったクラークは制裁金30万円と1週間の出場停止処分を受けた。

 まさかの故障だったが、佐々岡氏はムチ打ちの後遺症に苦しむことはなかったという。4月26日の巨人戦(広島)で復活の2勝目。それも2安打完封の見事なピッチングだった。さらにシーズン途中からは抑えに回ったのだから本当にタフだ。翌1995年も初の開幕投手を務めながら、同じく途中から抑えに配置転換。「僕はもうチームに貢献できれば、どこでもやりますという感じだったんでね」と事もなげに話すが、調整も含め、決して簡単ではなかったはず。それを普通にこなしたのもすごいところだろう。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

球界群像〜佐々岡真司編〜

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