17年前の絆が引き出したヌートバーの日本愛 “最後”の試合で伝えたかったこと
「カーネクスト 2023 WORLD BASEBALL CLASSIC 東京プール」は全勝で米国へ
「アリガトウ」「アリガトウ」――。野球日本代表「侍ジャパン」のラーズ・ヌートバー外野手は、第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)東京プールで“最後”のインタビューを終えると、聞き手にそっと近づき、感謝の気持ちを伝えていた。視線の先にいたのは、元日本ハムの斎藤佑樹氏だった。試合後のミックスゾーン。時間と場所に限りがある中、斎藤氏はヌートバーの心の温かさと日本への愛を存分に引き出していた。
準々決勝のイタリア戦(16日)が、日本で行う今大会ラストゲームとなった。3月途中から侍ジャパンに加わったヌートバーの一生懸命なプレーにファンは心を打たれ、東京ドームでも大きな声援と視線が注がれていた。この試合後、報道陣の取材に応じたヌートバーが、斎藤氏の質問に答えた中で、印象に残る言葉がいくつもあった。
一つ目は、声援の大きさについて。「びっくりしていますし、すごく感謝しています。日本のファンが野球やスポーツに対してすごく情熱を持っていると感じましたし、このチームの一つの小さなピースとして稼働できていることを嬉しく思っています」と目を輝かせていた。自分の貢献度は小さく、それよりもファンの存在の大きさが勝利に不可欠なものだと心から思っていた。
他にも日本での一番の思い出は「みんなで焼肉に行って、家族のように仲良くなれた」ということや、大谷翔平投手のことなど、異国の地に来て得られたことなどを明かしていた。その問答の中で一番、強く残ったのは斎藤氏の質問とヌートバーの答えだった。
技術的なことでも、精神的なことでもない。シンプルだが、今、ファンが知りたい部分が的確に描かれていた。「今日で(今大会の)日本最後の試合になります。また日本に戻ってヌートバーを見ることはできますか?」――。斎藤氏は優しい口調で問いかけた。ファンの気持ちになって考えた質問だった。