侍に敗戦も「野球界にとっては勝利」 メキシコ監督、記者会見で受けた“異例の”拍手
大会中、常にWBCの存在意義を訴え「野球は成長していきます」
メキシコに限らず、今回のWBCに出場している選手たちは、母国の野球熱を盛り上げるという使命をもって戦っている国が多い。日本やアメリカといった、野球が国内で1、2の人気を争う国は少ない。メキシコも他競技の人気が野球を上回っている国の一つだ。
ギル監督がいう「勝利」とは、その使命に対しての勝利だった。「メキシコでは、急速的に変化が起こるでしょう。明日なのか、1週間後なのか、1か月後なのか、1年後なのかわかりませんが、野球は成長していきます」。今大会、球場にはメキシコ国旗を振り、メキシカンハットを被って応援するファンがたくさんいた。敗れても惜しみない拍手が送られるのを見て、メキシコの野球が変わることを確信している。
国を背負う使命を持って戦っている選手たち。試合が終われば、ダグアウトの前に並んで観客席に拍手をし、ギル監督も試合後「日本チームには脱帽です」と敬意を示した。その行動も含めての勝利だった。
ギル監督は大会を通じて「WBCが世界の野球を成長させる」と訴えてきた。そして、言葉通りメキシコ、そして世界の野球を盛り上げる試合を展開した。そのメキシコナインの健闘を称え、記者たちが拍手をするのはごく自然のことだった。
(川村虎大 / Kodai Kawamura)