大谷翔平が放った“一生に一度”の本塁打 WBCのヒーローインタビューの重圧
極限の緊張状態だったテレビ朝日の三上大樹アナウンサーが見た大谷の仕草
日本の野球ファンを楽しませてくれた「第5回ワールドベースボールクラシック(WBC)」侍ジャパンのメンバーは印象に残る言葉を多く残してくれた。それを引き出したインタビュアーの存在は忘れてはいけない。大谷翔平投手がWBCで初本塁打を放った1次ラウンドの3月12日の豪州戦。ヒーローインタビューを担当したテレビ朝日の三上大樹アナウンサーは大会中、眠れない日々を過ごしていた。
三上アナがWBCでヒーローインタビューを担当するの大会自体は3度目のこと。テレビ朝日は第3戦のチェコ戦と第4戦の豪州戦。準々決勝のイタリア戦を東京プールでは放映した。第3戦では先発した佐々木朗希投手のヒーローインタビューを実施。そして第4戦。WBC初本塁打を放った大谷が選ばれたのだった。
「大谷選手にとっては、一生に一度だけのWBCの初本塁打になります。ファンの方もその言葉を楽しみにしていますし、お立ち台のあとに、他の取材を行わないということも聞いていた。記者の皆さんも、ヒーローインタビューの言葉で記事にする。それがファンの手に届く。そう考えたら、責任重大なと思っていました」
東京ドームの中心でマイクを手に持ち、大谷を待った。その距離、約5メートル。緊張感は高まるばかり。だが、それをほぐしてくれたのも、また大谷だった。
「一定の距離を保って、聞かなくてはいけなかったので、離れたところからの代表してのインタビューでした。大谷選手が軽く会釈をしてくれました。本来なら4万人の観客と向き合わなくてはいけないはずなのに、一人の聞き手にも視線を配ってくれたことで安心感がそこで生まれました。大谷選手の思慮深さを感じた瞬間でした」
記念すべきWBC第1号を放った豪州戦の初回無死一、二塁で生まれた。大谷は打席で右中間へ飛んでいく打球を見つめていた。そして、自身の顔が描かれた看板に直撃するのを見届けてから、ゆっくり一塁へ向かって歩き出した。推定136メートルの特大3ランに東京ドームはどよめいた。ただ、三上アナはものすごい打球よりも、大谷の仕草を見ていた。
「大谷選手が打席でずっと打球を見ていたんです。本塁打を打ちたい気持ちがありながら、4試合目で出た一発でした。さらにどこまで飛んでいくのだろうと着地点も見えない打球をずっと見つめて、動かなかった。大谷選手の目にはその打球がどのように映っているのだろうか、と気になりました」