練習場に“定住”、海外旅行でも素振り… バントもできなかった選手の大出世
高橋慶彦氏はオフの慰安旅行にバットを持参
高橋氏は1978年にレギュラー遊撃手に定着。そのシーズン、カープは後半に猛烈に巻き返して3位になった。「よく追い上げた、よく頑張ったからということで、オフにグアムかサイパンへの慰安旅行があったんですが、慶彦はそこにもバットを持ってきましたからね」と道原氏は明かす。
「たまたま泊る部屋が慶彦と一緒になったんです。で、バットケースがあるから『どうしたんや』って聞いたら『バットを振るんです』って。寝る前に振ってました。僕なんかゴルフ道具を下げてきたのにね。やっぱり、こいつはさすがやなって思いましたよ。そういうバットを持って行く気持ちが一流ですよね」
高橋氏の猛練習はそれに続く世代にも大きな影響を与えた。「山崎(隆造)や正田(耕三)もそうだし、野村(謙二郎)とかもそうでしょう。その後、みんな、すごい練習をしていましたからね。あの伝統は高橋慶彦が作ったんですよ」と道原氏は言う。
時代背景の変化もあって、昔ほどではなくなったものの、令和の今もカープには黙々と個人練習に励む選手は少なくない。大野寮長の道原氏は、そんな若手たちの姿を見て目を細めている。
(山口真司 / Shinji Yamaguchi)