度胸をつけた“7球勝負” 高校通算68発の大先輩から受け取った「最後のエール」

巨人・浅野翔吾【写真:荒川祐史】
巨人・浅野翔吾【写真:荒川祐史】

「先輩より力がない」穏やかな大室を成長させた“真っ向勝負”

 高校通算68本塁打の主砲・浅野翔吾(巨人)を擁して挑んだ昨夏の甲子園では、背番号10を背負い、最後の試合になった近江戦で先発マウンドに立った左腕。近江の山田陽翔(西武)との投げ合いに5回6安打4失点で敗れた記憶は忘れてはいない。「先輩より力がないってことをしっかり自覚しながら、泥臭くやっていかないと、夏に絶対勝てない」。この試合を振り返り、同校が掲げる「守り勝つ野球」を改めて「徹底してやっていきたい」と前を向いた。

 敗れはしたが、堂々とマウンドに上がった。大室の自信の裏には、昨年末に行われた“真剣勝負”がある。学校のグラウンドで行われた引退試合で、ドラフト1位の強打者・浅野との対決が実現した。10-9で優勢だった1、2年生チームは8回、2死の場面で途中出場の1番・浅野を迎えた。「すごい打者なので、打ち取るとか……そういうのはできません」。そう言っていた大室だが、引退試合では一発逆転を狙う浅野を空振り三振に仕留めてみせた。全7球がストレートでの真っ向勝負だった。

 今回の敗戦を「自分の中で『結果はコントロールできない事』と思っている」と割り切った。悪い事ばかりでなく、次への学びに目を向けるエース。昨夏の反省を生かし、試合前の心と体を整えた。「甲子園では100%に近い力を出せたと思う」。確実に成長していることを実感できたマウンドだった。

(喜岡桜 / Sakura Kioka)

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