笑顔の裏で…「きついっすよ」 慣れない役割への本音、WBCで山川穂高が残したもの

経験のない代打は「きついですよ」という本音も【写真:Getty Images】
経験のない代打は「きついですよ」という本音も【写真:Getty Images】

笑顔の裏で……「きついっすよ」と漏れた本音

 帰国後、WBCの感想を聞かれた山川は「野球というスポーツの力を感じ、こんなに応援してもらえると感じることができてよかった」と喜んだ。その上で「もう少し(試合に)出たかったという悔しさと、周りがみんな打っていた中で、あの立ち位置は仕方がなかったという思いが半々」とも。一塁手には準々決勝のイタリア戦から好調の岡本和真(巨人)、指名打者は大谷翔平(エンゼルス)だったため、複雑な思いもあった。

 それでも、山川はチームのために戦った。それぞれの球団では主力の選手が控えにまわることは、これからの侍ジャパンでも多く見られるだろう。西武の主砲は、下を向くことなく、終始明るかった。『個』があるべき姿をベンチ内で見せてくれていた。

 ただ、経験のない代打は「きついですよ」という本音もメキシコ戦後に漏らしていた。そのまま、気持ちが沈んだままだったら、好結果は出ていたのだろうか。メキシコ戦の8回の打席、山川の表情には弱気な面は見られず、気持ちを作って、グラウンドに立っていた。その状況の中で山川を奮い立たせたものは何だったのかを聞いた。

「源田が目の前で3バントで送って、二、三塁。一発出れば逆転。外野フライを打てば間違いなく1点は入る。僕は最低限と言う言葉は好きではないんですけど、最高の結果を目指す中で、ああいう結果になった。打席の内容としては良かったです。もうちょっと上がれば本塁打だったんでね、まぁまぁまぁまぁ、いいかな、と」

 最初に言葉として出てきたのは、同僚・源田壮亮内野手(西武)の名前。決死の覚悟で決めたスリーバントのシーンを挙げた。

 8回無死一、二塁。バントに定評のある源田が、2度ファウルで失敗をした。送りバントがやりにくい投手であったことは容易に想像ができる。源田ならば、2ストライクからヒッティングでゴロを打たせる選択肢もあった。それでも、栗山監督は3バントを指示。源田はそこで決めた。山川は2人の執念を感じ取り、個人的な感情を振り払った。

2023年シーズンはオリックスとの開幕戦、源田は出場見送りに

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