笑顔の裏で…「きついっすよ」 慣れない役割への本音、WBCで山川穂高が残したもの

侍ジャパンの一員として世界一に貢献した西武・源田壮亮【写真:Getty Images】
侍ジャパンの一員として世界一に貢献した西武・源田壮亮【写真:Getty Images】

2023年シーズンはオリックスとの開幕戦、源田は出場見送りに

 源田の送りバント。実は後の9回に村上が放ったサヨナラ打にも関係している。栗山監督は今回のWBC期間中よく「確率」という言葉を口にした。

 それまで3打席連続三振と不振だった村上に回ってきた無死一、二塁の打席。指揮官はそれよりも前に代わりの選手にバントをさせる「準備」を怠ってはいなかった。“確率論”の中で、送りバントをした方が勝利の確率が高いと判断した時に、瞬時に対応できるようにするため、ベンチでバントをする代打へ準備の指示を出していたという。

 だが、栗山監督は最終的に代打は送らずに、村上に任せた。理由はバントの上手い源田が2度もファウルすることは、この局面での送りバントは難しいことを意味していたから。緊張感の中で決めるバントの“成功率”と、沈黙している村上が殻を破る“確率”を比べた時に、どちらが高い確率なのか――。監督は主砲のバットを信じることにした。準備をした上で、最善を尽くした。そして、結果的に判断は間違っていなかった。

 準備という部分では山川も同じだった。宮崎合宿から練習にいち早く姿を現すのが印象的だった。マイアミのローンデポ・パークでの練習でも一番はじめにグラウンドに姿を見せ、芝や土の状態を確認していた。「最高の準備をした状態で試合に入れば、いい結果が必ず出ると信じている。あたふたした状態で試合に入ると、後悔することが多くて。準備して結果が出なくても、後悔することもない」。貫いたスタイルは、どんな苦境でも通用することを証明した。

 WBC優勝の熱がまだ覚めない中、2023年のプロ野球はいよいよ開幕する。西武は31日にオリックスと本拠地で開幕戦を戦う。西武のスタメンには共に戦った源田の名前はない。WBC韓国戦で右手小指を骨折し、出場を見送ることになったためだ。源田を欠いてスタートという苦しい状況だが、世界を相手に心も強くした山川が勝つための“準備”を整え、WBCからのリスタートを切る。

(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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