「普段使わないカーブ」投げる“余裕” 大一番も…大阪桐蔭・前田が見せた底知れぬ能力

147キロ直球は「1球だけ気持ちを入れて投げました」と笑顔

 変化球だけではない。直球の球速も自由自在に操っており「その辺は長けている子です」と西谷監督も証言する。この日は5回表1死に東海大菅生の9番打者・日当直喜投手(3年)を空振り三振にした球が147キロと飛び抜けて速かったが、前田は「追い込んだときのカーブで、ちょっとオラオラというか、こっちをにらまれた感じがあったんで、自分も1球だけ気持ちを入れて投げました」とニヤリだ。

 前田の直球の球速変化については南川幸喜捕手(3年)も「前田がいいピッチャーなんで、真っ直ぐ張りでくる(相手)チームが多い。そこをずらしていく意図があります」という。さらに西谷監督はこう断言する。「今日のゲームだけ勝てばいいんだったら(球速は)もっともっと出ると思います。スピードコンテストなら、たぶん150キロは出ると思います」。すでに完成された投手と言われがちな前田だが、そんなことはない。球速も含めて、まだまだ伸びしろいっぱいの逸材なのだ。

 西谷監督は「技術的には今いろんなことをやっているところですけども、やっぱりチームを背負って投げるという気持ちでやっていると思います。去年は先輩たちの中でのびのびと打たれてもいいよ、何でもいいよ、思い切って放れよって気分よく先輩たちにしてもらってやっていたのが、勉強してますのでね、勝敗を背負って、チームを背負って、いろんな意味で投げようというのは成長していると思います」と目を細める。

 6回表、左足に打球直撃のアクシデントもあったが、普通に投げ切った前田。「バランス良く投げているし、脱力してから指先で100%投げ込めていると思う。自分のフォームになっていると思うので、疲労感はあまりないです」。史上初の偉業まで、あと2勝。春の甲子園でも勝ちながら、自分自身を確実にジャンプアップさせるつもりだ。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY