遺族の思いに心寄せ…少し躊躇った「98」 京田陽太と木下雄介さんをつなぐ背番号の意味
2021年に27歳の若さで亡くなった元中日投手・木下雄介さんがつけた「98」
背中が、重たくなった。慣れ親しんだ「1」から「98」に。トレードで中日を去った京田陽太内野手は、新天地のDeNAで異例の背番号を選んだ。「普通は自分からつけないっすよね」と微笑む。亡き戦友の面影が色濃い数字には、少しためらいもあった。
2016年のドラフト2位で中日に入団してから2年間は「51」。学生時代から憧れていた鳥谷敬と同じ「1」をプロ3年目で手に入れた。4年間背負い、選手会長も3年間務め、チームの顔となった矢先のトレード。DeNAではすでに背番号1が埋まっている状況で、球団から他の若い番号を薦められながらも、了承を得て「98」を選び取った。
2021年8月に27歳の若さで亡くなった元中日投手・木下雄介さんが、支配下契約をつかんだ2018年から背負っていた番号。単なるチームメートの枠を超え、家族ぐるみでよく出かける親友のような、お兄ちゃんのような存在だった。
遺志を継ぐとか、木下さんの分まで頑張るとか、勝手に背負うつもりはない。これからも一緒に戦いたいという“同志の証し”だった。ただ、勝手な思いで決めていいものか。頭をよぎったのは、遺族の存在だった。
すっかり物心がついた木下さんの2人の子たちを思う。「98番を見て、悲しい記憶を思い出させてしまうんじゃないかというのもあって」。その迷いは、すぐに杞憂に終わる。「喜んでもらうためにやったわけじゃないですが、奥さんにも喜んでいただけたので良かった」と胸が軽くなった。