「こういう時は打てません」侍スラッガーが襲われた“WBCロス”「冷静すぎる自分が」
「今年の開幕戦は全く緊張しなかった。これまでにはなかったこと」
WBCでは岡本和真内野手(巨人)に一塁スタメンの座を奪われる格好になり、代打での出場が多かったが、準決勝のメキシコ戦で代打出場すると、試合の展開上極めて重要な犠飛を打ち上げるなど存在感を示した。そして決勝の舞台の米マイアミから帰国すると、翌日には西武の練習に志願して参加。オープン戦で一発も放ち、勢いに乗って公式戦開幕に突入するかに見えた。
しかし「今年の開幕戦は全く緊張しなかった。これまでにはなかったことです。例年は心臓がバクバクして、吐き気を感じるほど。WBCにはそれがありました」と明かす。例年なら自然に湧き上がってくる緊迫感が、今年は物足りないと言うのだが、それも人間のバイオリズムとして、やむをえないのではないだろうか。山川は五輪やWBSCプレミア12への出場経験がなく、これほど世界が注目する国際大会は初めてだったのだ。
さらに、松井新監督を迎えたチームを春季キャンプ中盤から離れたことで、「去年とは試合前の練習の流れが変わっていたり、打撃投手の顔ぶれが変わっていたり、オープン戦期間中のミーティングの内容を一部聞いていなかったりする。僕、こう見えて敏感なので、これから慣れていかないと」というのが現状だ。
「まだ開幕して2試合を終えたところですが、一度リセットしたいと思います。自分で自分を高めていきたい」と切り替えた山川。「言いわけをするつもりも、このまま終わるつもりもありません。WBCがバタバタと終わり、バタバタと帰ってきて、バタバタと試合をしている感じですが、これから自分を軌道に乗せていきます」とうなずいた。
代打の切り札としても、ムードメーカーとしても、侍ジャパンを鼓舞し続けた男の本領発揮を、もう少しだけ待とうではないか。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)