千賀滉大を包んだ抗しきれない感情 投球練習で見えた異変「腕しか感覚がないような」

2回から6回1死までは1安打無失点…計88球で降板した

 2回からは見事に立て直した。降板する6回1死まで1安打無失点。奪った6個の三振はすべてフォーク。真骨頂の投球を披露し88球を投げきりマウンドを譲った。ヘフナー投手コーチによると、キャンプ最終調整となった3月27日の紅白戦で70球だったため、この日は100を投げさせないという制限を設けた。

 昨年11月、ラスベガスでのGM会議で千賀の移籍先を模索していたジョエル・ウルフ代理人は投手としての実力に加えこう添えている。

「甲子園を沸かせた貴公子でもドラフト1位指名されたわけもではない。彼は育成ドラフトで指名された日本人選手として初めてメジャーに来ることになる。何もないところから粉骨砕身して自分自身を磨き上げ、スターになった。我々が持つ彼への敬意は計り知れない」

 愛知県立蒲郡高校から2010年の育成ドラフト会議で、ソフトバンクから4巡目指名を受けて入団した千賀は、前日1日(同2日)の試合前、囲まれたニューヨークメディアにこう言った。

「日本で野球を仕事にするということすら思ってなかった人間だったので。本当に少しずつ(メジャーを目指す)心境が変わってきたという感じです」

 無名だった高校球児が日本プロ野球の育成からはい上がりメジャーリーグのマウンドに立つ――。物語にはヒューマンインタレストが忍んでいるからこそ、夢の初陣で主人公の心に達成感が滲み出たとしても、率直にして雄渾(ゆうこん)な真価の枠組みが歪むことはない。

初回の投球練習から異変「打者を迎える準備というところじゃなかった」

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