千賀滉大を包んだ抗しきれない感情 投球練習で見えた異変「腕しか感覚がないような」

初回の投球練習から異変「打者を迎える準備というところじゃなかった」

「いつもだったらすっと冷静になれる部分でも、やっぱり体がすごいヒートしているのが自分でも分かったので。本当に一杯一杯で、やっと1球目を投げられるっていうところが僕の中ですごく強くて。もう本当に何年も待ったことですし。そこに対して、これはもう仕方ないかなと思いながらマウンドにいて。戦うというよりも心がどこにあるんだろうみたいな感じだった」

 こう吐露した千賀だが、実は、その心の葛藤は初回の投球練習から出ていた。投じた8球の制球は乱れ、最後に投じたフォークはトーマス・ニド捕手の約1メートル手前でワンバウンドした。ここに水を向けると、右腕は潔く返した。

「あそこで逆に入りきれてない部分があったのが、おかしかったなぁっていうのは今思えばですかね……。やっぱりもっとバッターを迎える準備というところじゃなかったのかなというふうな印象です」

 積年の思いの硬直化をマウンドで解きほぐし、闘争心に変えた千賀滉大はメジャー初登板で白星をつかんだ。

(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY