批判された落合采配の“正解” 16年前に物議…元コーチが今でも後悔なき「決断」
「3人で抑えた岩瀬をもっと評価してほしい」
あの時、近藤氏はブルペンで岩瀬に「9回、いこうよ」と声を掛けたという。「岩瀬は『えー』って言いましたよ。一番きつかったのは岩瀬ですからね。普段は考えられないような緊張感、ドキドキだったと思いますよ。だから、落合さんも言ってますけど、なんで岩瀬の評価をしてあげないのって僕も思います。山井の記録がどうのこうのって批判している人たちは、批判する前に、あそこで登板して3人で抑えてきた岩瀬の評価をしてあげなさいよってね」。
あのシーンで、最終決断をしたのはもちろん落合監督だが、近藤氏も全く同じ考えだった。「もし、日本一ができなかったらどっちの文句を言うんですかってことですよ。(日本一も山井の記録も)両方駄目だったら、どうするのってことですよ。いろいろ言っている人は責任とれるんですかってことじゃないですかね。毎年、日本一になっているチームだったら、いいですよ。53年ぶりですよ。半世紀ぶりですよ。そしたら、そっちを選ぶでしょ、確率的な問題で」。
もしも、山井があの時「行かせてください」と言っていたら、どうなっていたのだろうか。近藤氏は「そしたら、落合さんも森さんもたぶん山井を行かせたと思います。いや絶対行かせてますね」と推察する。だが、山井はそう言わなかった。「これはあくまで僕の想像ですけど、山井も代わった方がいいんじゃないかって雰囲気を感じ取ったんじゃないですかね。でも良かったですよね、何年か後に山井はノーヒット・ノーラン(2013年6月28日、DeNA戦)をしましたから」。
緊迫の状況で岩瀬がピシャリと抑えて完結した球史に残る日本シリーズの大舞台での完全試合リレー。その場に居合わせた近藤氏にとっても、忘れられない思い出だ。
(山口真司 / Shinji Yamaguchi)