プロで大活躍も“死ぬまで後悔” ドラ1右腕の夢散る…忘れられぬ「止まったボール」
ずっと思い続ける「甲子園に行きたかったねぇ…」
タイミング的にもアウトと思ったのが三塁打となり、そしてスクイズを決められて1点を失った。「もうスクイズをやるのはわかっているから、インハイにしか投げなかった。やってきた。見事に小フライが上がった。でも、それが微妙なところに……」。打球が落ちた瞬間「終わったと思った。高校野球が終わったと思った。もう1回攻撃があったんだけど、ああ、終わったって思ってしまった」という。
成東高は野球の強豪校で歴史がある学校にもかかわらず、甲子園には1回も出場したことがなかった(1989年夏に初出場)。「当時は銚子商、千葉商、習志野。この壁が破れなかった。だから俺が破ってやろうと思っていた。自信もあったんだけどね」。甲子園は高校入学以来の大目標だった。つらい練習にも耐えた。強いピッチャーになれる、甲子園に行ける、そう信じて日々を過ごしてきた。それが、あのスクイズで終わってしまった。
ドラフト1位で中日に入団し、抑え投手としても、先発投手としても大活躍したが、甲子園に行けなかったことは一生の後悔でもあるという。その悔しさが、プロで成功するバネにもなったのかもしれないが、たとえ、そうだとしてもやはり無念の思いが先に出る。ちょっと声のトーンを落としながら、こう話した。「甲子園に行けなかった。行きたかったねぇ……本当に行きたかったねぇ……。ずっと思うだろうね、きっと、ご臨終になるまで。行きたかったなぁってね」。
(山口真司 / Shinji Yamaguchi)