全国中継でマウンドへなぜか猛ダッシュ 目立ちまくったプロ初勝利…闘将との深い“縁”

「俺でいいんですか」星野氏と入れ替わる立場で中日の抑えに

「福井の広島戦だったけど、試合前に仙さんが『いいか、ここはな、俺の初勝利の球場なんだ。ゲンがいいから飛ばして行け!』って応援してくれたんだよ」。星野氏は1969年5月5日の広島戦(福井)で6回2/3を1失点、見事にプロ初先発、初勝利をマークしていた。

 鈴木氏も勝てば全く同じケースになる。だからこそ、そんな後輩のチャンスに星野氏も力が入ったのだろう。だが「プレーボールの初球、トップバッターにホームランを打たれちゃった。ポール際、切れろ、切れろって思っていたら、カーンってポールに。すごい音がした。のど自慢みたいな鐘の音がした。これも印象に残っているね。初先発、初球ホームランだったもん」。星野氏のゲキもむなしく、4回3失点で敗戦投手。「でも、それで覚えちゃった。福井が仙さんの初勝利の球場ってことをね」。

 今でこそ、笑い話になっているが、当時はどうだっただろうか。鈴木氏にとって星野氏は、この先の野球人生にも大きく絡んでくる。「4年目に抑えになる時もコーチに『星野を頭(先発)に持って行くから、お前がケツ(抑え)をやれ』って言われた。『俺でいいんですか』って気持ちだったけど、それからプロ野球選手の生活が始まったって感じだったね」。さらには指揮官と選手の関係としても、縁が続いた。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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