「お前が取ったらいかん」 タイトル獲得も…まさかのクレームに謝罪「その通りです」

小林繁氏の投球回は217回1/3「俺とは全然違っていた」

「それでも(タイトルは)もらったもん勝ちなんだけど、あの時、小林さんのイニング数(217回1/3)は当然、俺とは全然違っていたからね。取ったら、いかんやろって、どれだけ言われたか。でも言われてもしょうがないと思った。そりゃあ、小林さんの立場なら、ひと言、言いたいわなぁって思った」。だから謝った。「表彰式で謝りました」という。

 1976年シーズンは他にも鈴木氏の22歳のバースデーである7月3日、王貞治氏にナゴヤ球場の右翼席へ一発を浴びたのも忘れられないという。「俺が打たれたのが王さんの通算699号だった。王さんはそこからスランプに入った。そして700号を打たれたのが大洋の鵜沢(達雄)さんで、成東高の2年先輩。数少ない成東の選手が699と700を打たれたんだよねぇ……」。不思議な縁。「どうせ打たれるなら700の方が良かったなって思いましたけどね」。

 プロ3年目に最多セーブ投手に輝き、4年目は最優秀防御率と最優秀救援投手の2つのタイトルを手にした。順調すぎるくらいに階段を上がっていった。鈴木氏はしみじみという。「終わってみたら、その年はいいオフを過ごせたよね。これがプロ野球選手のオフかなっていう感じのね。いろんなところから引っ張りだこってこと。千葉の実家へ帰りたいけど、帰る時間がそんなになくなっちゃった。こんなに忙しくなるんだなぁって思ったね」。

 それを経験して以降、シーズンの目標を問われるたびにこう言っていた。「いいオフを過ごすことです」。もっと成績をアップさせたい。そんな欲にもつながった。もちろん、小林氏に頭を下げたことも忘れずに……。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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