試合前に荷造り…遭遇した“戦力外の瞬間” エ軍「兜担当」と交わした別れの握手

兜担当を担っていたブレット・フィリップス(右)【写真:ロイター】
兜担当を担っていたブレット・フィリップス(右)【写真:ロイター】

取材後に「Nice Try」「Good Job」…記者へ見せた丁寧な対応

 クラブハウスでは、日本人の記者にも笑顔で話しかけるのが恒例だった。単独で話を聞いた時も、伝わりやすいように簡単な英語を用い、取材後には「Nice Try」「Good Job」とこちらも簡単な言葉で労ってくれた。その後も、会うたびに「How are you?」と声をかけてくれた。ウォルシュの取材が終わった後、チーム関係者や記者たちがこぞって別れのあいさつをしに行った。悲しげな表情の関係者たちとは裏腹に、フィリップスはいつもの笑顔だった。

 チームの外野陣は、レギュラー3人に加えてモニアックが台頭。3Aではアデルがリーグトップの15本塁打を放ち、昇格を待っている。フィリップスは今季、13打数1安打で打率.077。厳しい立ち位置なのは目に見えていたが、いざDFAになると、記者も受け止めるのに時間がかかった。

 1週間前にも、敵地でのオリオールズ戦の前に、傘下3Aのソルトレイクに向かうクリス・オーキー捕手に遭遇した。オリオールズの本拠地“カムデンヤーズ”の正面入り口前の階段に座り、野球道具を持ってタクシーを待っていた姿を思い出す。この時と同様に、何と声をかけていいかわからなかった。

 奇しくもこの日、大谷は今季11号を放った。そこに、ベンチの前で兜を持って待つフィリップスはもちろんいなかった。生存競争の激しいメジャーリーグでは当たり前の光景かもしれないが、過酷な世界だということを再確認させられた。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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