球速130キロになぜ打者苦戦? 燕OBが秘訣証言…石川雅規にある“他投手との違い”
通算200勝まであと16勝…「いくまで辞めないでほしい」
入団時の印象を語る。「ずば抜けて凄いピッチャーではなかったですが、自分をわかっている感じ。変化球のキレはありました。スピードを上げようとかでなく、俺はコントロールと打たせて取るピッチングでやっていくんだという気持ちが伝わってきました」。圧倒的でない分、コンビネーションだったりタイミングを変えたりと工夫を凝らしていた。
石川の快活で勉強熱心な姿勢にも感心する。飯田氏が引退後にヤクルトのコーチを務めた際、積極的に野手コーチにも質問する場面に遭遇した。例えば打者のボールの待ち方。「バッターは、どう考えているんですか? と聞いてくる。石川はシンカーが得意だから追い込まれると、それを待つ。逆にストレートが裏になって効くよ、とか。こうしたらいいんじゃないか、と僕もよく答えました」。
悩んでいる後輩がいたら食事に誘うなど、兄貴分として投手陣を引っ張っていた。童顔でフレンドリー。自分のためだけでなくチーム優先の姿勢は誰からも愛され、勝たせてあげたくなる。
“長寿”の投手を日本球界の歴史で紐解くと、野手を含めた最年長記録の50歳までプレーをした山本昌(中日)を筆頭に、工藤公康(西武、ダイエー、巨人、横浜)、現役では石川に次ぐ42歳の和田毅(ソフトバンク)とサウスポーが多い。いずれも豪速球タイプではない。「みんなストイックですよね。睡眠にしても食事にしても野球のために生活があるみたいな。体が強い。本格派でない方が長くできるのかもしれませんね。肩は消耗しているんでしょうけど、消耗度が違うのかも」。
現代は外国人選手と変わらぬ大柄で、150キロ超の投手も珍しくない。パワー全盛の中、石川は体は大きくなくてもボールは速くなくても結果を残してきた。プロの世界はもちろん、子どもたちにもある意味、希望を与える存在とも言えそうだ。「見本ですよね。そういうピッチャーもいることは大事。どうしても速い球を投げたい気持ちも出るでしょうが、長生きするには結局はコントロールです」。通算200勝まであと16勝。「いってほしいし、いくまで辞めないでほしい。できると思います」。飯田氏は頼もしい後輩にエールを送る。
(西村大輔 / Taisuke Nishimura)