井口資仁氏が提案する「現役ドラフト」の改善 移籍活性化に願う“チャンス”の増加

昨季までロッテ監督を務めた井口資仁氏【写真:荒川祐史】
昨季までロッテ監督を務めた井口資仁氏【写真:荒川祐史】

増えつつあるトレードに込められた監督たちの親心

 先日も巨人とオリックスが廣岡(大志)と鈴木康平の交換トレードをしました。以前に比べてトレードの数は増え、ネガティブなイメージを持たれることも減ったと思います。選手が1つの球団だけではなく、色々な球団を経験することは視野が広がり、いいこと。僕自身、日本では2球団、メジャーでは3球団でプレーしましたが、球団によって全くカラーが違うと知れたことは大きな財産です。さらに、応援してくれるファンも増えますからね。

 チームとしても色々な経験を持つ選手の加入は大歓迎なので、もっとトレードや現役ドラフトが活発になると野球会全体が活性化され、よりよいものになると思います。実は、監督同士では割とよくトレードの可能性を探るやりとりをしています。トレードで移籍した先で活躍されたら困るのでは、と聞かれることもありますが、監督やコーチなど現場にいる人がそう考えることは、まずありません。

 現場としては足りない戦力が欲しいし、出番のない選手が他チームでチャンスをもらえるなら応援したい。監督だってかつては選手だったわけですから、どの選手にも1年でも長くユニホームを着て野球をやってもらいたい想いがあります。その年の構想に上手くハマらずなかなか1軍に上がれない選手は、2軍で頑張り続けるよりも他のチームに行って1軍で使ってもらう方が道が拓けることもある。また、トレードされたオフに戦力外となることは少ないと考えると、期限ギリギリでもトレードに出して1年でも2年でも現役生活を延ばすことができたらと画策することもある。

 この想いはどの監督も一緒。だから、監督同士ではよく「この選手欲しいんですけどどうですか?」「だったら、あの選手とトレードできる?」という会話をしています。監督会議やキャンプの時、あるいはトレード期限が迫る交流戦の時は、監督同士でトレード案の交換をすることもよくあること。監督同士で話した案をそれぞれ編成担当に伝え、そこから編成同士で話し合ってもらうわけですが、実現するものもあれば、年俸の差や色々な理由でまとまらないこともあるのが現実です。

 選手が1年でも長く現役を続けられるチャンスを増やすため、そして何より応援してくださるファンの皆さんに魅力的な野球をお届けするためにも、現役ドラフトのさらなる整備、そしてトレードの活性化に期待したいと思います。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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