誰にも明かさなかった大手術… 一度は投げだした“甲子園の星”西武・岸潤一郎、再生の道
大学時代に「誰にも相談せず」経験したトミー・ジョン手術
リハビリ期間中は、以前とは異なり意識を高く持つことができた。「環境も整っているし、情報もある。自分が成長できるようにトレーナーさんがついてくれて、体幹トレーニングなどを一緒にやってくれました」。離脱は悔しかったが、その期間を打撃の改善にも充てることができた。
大学時代は肩と肘の怪我に苦しみ、トミー・ジョン(TJ)手術を経験している。「怪我もあり、野球が楽しくなくなっていました。トミー・ジョン手術をしたら野球から離れられるんじゃないかと思って、誰にも相談せずに手術をしました」。その後、大学も中退したが、周りに支えられて怪我と向き合うことができた。「怪我をしている間でも、いろいろなことができるようになりました。1軍で活躍して、支えてくれる皆さんに恩返しをしたいと思っています」。
怪我も癒えた今季は、ここまで2軍で26試合に出場、打率.284をマークしている。ドラフト1位で早大から蛭間拓哉外野手が加入するなどライバルが増えたが「外野手全員、危機感を持っていると思います。蛭間を見ていて『なんでそんなの打てるんだろうな』と思うこともあります。年齢は関係なく、自分にないいいところを見つけて盗みたいと思っています」。
TJ手術をしたチームメートから質問を受けることがあり、自らの経験を伝えている。「きついやろうなと思います。でも、みんなプロに来るだけあって、やる気をなくす人はいない。凄いなあと思います」。自身は一度は投げだしてしまったが、諦めずに食らいつき、憧れの舞台に立った。かつて甲子園を沸かせた26歳は、これからも幾多の課題を乗り越え、躍動する姿を見せてくれるに違いない。
(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)