“浪人中”の怪物右腕と厳戒態勢で極秘練習 軽々と遠投140m…次元の違いに唖然

衝撃のキャッチボール「135~140メートルは投げられる人」

 練習は午前8時ころから始まったという。「その時間にグラウンドに行ったら、向こうから来るわけですよ。ジャージーを着た太い人が」。驚いたのは、キャッチボールだ。「ホームベースのところに江川さんがいて『どんどん下がってくれ』と言うから、僕は投げるたびにバックスクリーンの方に向かって下がっていった。確か、当時の法政のグラウンドって126メートルあったんですよ。100メートルちょっとくらいで僕はいっぱい、いっぱい。ワンバウンドを投げるのは失礼と思いながらも『大丈夫、大丈夫』って言ってくれたので……」。

 1ダース用意されていたニューボール。「普通の4年生にも出していないのに、やっぱり江川さんは違うんだなって思いながら。僕が投げたボールは届かないからニューボールに土がつくんですけどね。それで、とうとう126メートルのところまで下がった。120の時も驚いたけど、126の時は上に当てましたからね。ということは135~140メートルは投げられる人なんだと思った。それも助走をつけて投げるんじゃないですよ。普通に投げて、どーんと行くわけですからね」。

 この時に川端氏は「こういう人がプロに入るんだなって思った」という。「なぜ、僕が大学の時にプロ野球の夢を持たなかったのは、それがあったから。ただ、セレクションも頑張って入学したし、4年経って四国に帰って就職できたらいいなって。その思いで4年間野球したって感じでしたよ」。

 江川氏はその年(1978年)のドラフト会議前日に巨人と電撃契約。ドラフト前々日にクラウンの交渉権が切れたという解釈による“空白の1日事件”を経て阪神がドラフト1位指名した。結局、阪神から巨人へトレードという形でプロ入りしたが、川端氏にも思い出深い先輩右腕だった。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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