“3代目ぽっちゃり”に漂い始めた本格覚醒の気配 監督絶賛の「いい仕事といい存在感」
昨季イースタン・リーグで6盗塁をマークした走力
2020年ドラフト1位で桐蔭横浜大から入団したが、1年目は6試合出場で1本塁打、打率.063にとどまり、2年目の昨季は1軍出場なし。本人の野球人生にとっても、今が千載一遇のチャンスと言えるだろう。
形から入るというわけではないが、4番として「どっしり構えることを心がけています。あたふたしていたら、弱そうに見えると思うので」と言う。「どの球団でも4番はどっしりと構えている。今日の相手の大山(悠輔内野手)さんも、どっしり構えて力強いスイングをするので、相手投手には失投できないというプレッシャーがかかると思います。自分もそういうバッターになっていきたいです」と観察力をうかがわせる。
さらに松井監督が「試合前から『僕の登場曲、聞いといてください』と言っていた」と証言したように、臆するところのないポジティブ思考と余裕も感じさせる。
チームにとっては中村、山川に続く、体重100キロ超の主砲候補。以前、記者が渡辺久信GMに「西武には、ぽっちゃり系の選手を育てるノウハウがあるのですか?」と聞くと、「ノウハウはないけれど、少なくとも、それがハンデになるとは思っていない」との答えが返ってきた。固定観念にとらわれない鑑定眼が、人材発掘の秘訣なのかもしれない。
実際、渡部は昨年イースタン・リーグで6盗塁をマークしたように、走力もある。この日も3回2死から四球で出塁すると、続くデビッド・マキノン内野手の打席の3球目にスタートを切り、スタンドをどよめかせたが、マキノンがこれを打って遊ゴロに倒れたため、1軍初盗塁とはいかなかった。中村も通算26盗塁をマークしており、“大柄な体格=走れない”と見かけで判断することはできない。
松井監督に「いい仕事をしてくれているし、いい存在感を出してくれている。雰囲気が明るいですから」と言わしめる渡部。現状ではまだまだ“代役”の4番の域を出ていないが、1軍定着とレギュラーの座奪取につなげない手はない。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)