DeNAが見据える球団の在り方 異例の欧州視察で得た“スポーツと地域”の可能性
住田氏が描く今後…他業種や地域との接点づくりの「ヒントもらった」
次に、共有する文化。「共有することで初めてフィードバックがもらえて、それが気付きになるという学習サイクル。組織として基本、隠すことはないのが当たり前と話されていた」と日本とは異なるマインドに刺激を受けた。また「どんどん学べ」という意識も。「クラブには“留職制度”といって、籍を置きながら違う国に行って一定期間仕事をすることを推進している。別の場所で働き、成長して戻ってきて、組織内競争が生まれ、個々の学習意欲が高まる……。学ぶことも全て自主性を重んじるという組織文化がありました」。
ビジャレアル側からも「野球チームが人材を育てることにここまで力を入れているとは驚きました」との言葉があったという。選手だけではなく、コーチもスタッフも学ぶ機会を組織がどのように創出するかなど、貴重な意見交換の場にもなった。
この視察を今後、どう生かしていくのか。住田氏は、まず「コミュニティとどう交わっていくかのヒントは凄くもらったかなと思っています」と振り返る。選手でいえば、アスリート同士の交流の場、他業種との接点なども今後検討していく。
もう1つ挙げたのは、地域との接点だ。ビジャレアルは、本拠地のあるバレンシア州カステリョン県の五輪強化選手に対して、無償で施設を貸し出すサポートを行っている。それらに費やす予算は全て負担するなど、協力を惜しまない。「すごく面白い発想。クラブが何を地域に還元していくのかという問いは持ち帰りたいと思いました。“スポーツ×地域”を体現していると感じることができました」と発想のヒントを得た。
全ては、DeNAがチームとして掲げた5か年計画の「ビジョン」「ミッション」「バリュー」を組織内で体現していくことにつながる。ビジョンで掲げた「幸せ・誇り・強さ」の同時達成へ。「接点さえつくれば、その機会で何を感じるか、どんな刺激を受けるかは人それぞれ。そこで感じた“何か”は必ず自分の人生を豊かにすることにつながったり、その選択肢が増えると思っています」と住田氏。欧州の“育成力”も吸収し、球界では超異例の「組織・人材開発」を行っていく。
(町田利衣 / Rie Machida)