覚悟のメジャー挑戦は「いい声を聞けないと思っていた」 旅立ったナックル姫の“感謝”

史上初となる女性メジャーリーガーを目指し渡米した吉田えり【写真:本人提供】
史上初となる女性メジャーリーガーを目指し渡米した吉田えり【写真:本人提供】

批判も覚悟したメジャー挑戦、予想外の温かい声援に「自分のためだけではない」

 女子野球の“パイオニア”が、新たな一歩を踏み出した。エイジェック女子硬式野球部の吉田えり投手は3日深夜、米国へ向けて日本を旅立った。史上初となる女性メジャーリーガーという夢を叶えるための挑戦。高く険しい茨の道ではあるものの、「進化するつもりで行きたい」と、笑みを浮かべながら壮途に就いた。

「今の一番強い気持ちはワクワクでしかないです。早く試合をしたい、マウンドで投げたい。少しでも早く野球をしたいですね」。開口一番、吉田は渡米直前の率直な気持ちをこう表現した。彼女に不安の色はうかがえなかった。

 5月23日、吉田は所属事務所を通じてメジャーリーグに挑戦する意向を表明した。メジャーでは近年、女性初のGMが誕生し、コーチ職を務める女性も出てきたが、こと選手に限ればメジャーはおろかマイナーリーグにも存在しない。あまりに高き壁。しかし、野球道を志す女性たちの“先駆者”となってきた吉田にとっては、むしろ自らが開くべき扉にも見えた。

 2008年、高校2年生の時に関西独立リーグからドラフト指名され日本プロ野球初となる女性選手となり、“ナックル姫”として一世を風靡。その後は日本や米国の独立リーグに参加し、米独立史上2人目の勝利投手の功績も成し遂げた。しかし結果が出ない時期や故障も経験。近年は現役引退がちらつくこともあった。それでも、自分の内面との対話を通じて心の声を聞くコーチングと出会い、「怪我を重ねても野球を辞めることができなかった。まだ本当はナックルボールに挑戦したいんだっていうのに気づいて……もう一度海外でやりたい」との想いから、今回の決断に至った。

 新たな挑戦に、周囲から続々とエールが届いた。「すごい反響があって。まさかこんなにたくさんの人が反応してくれるとは……。年齢を考えたら、あまりいい声を聞けないんだろうなと思っていたので。でも温かい声援ばかりいただいて、特に身近なチームメート、会社の人たちに背中をたくさん押してもらえました。(今回の渡米は)自分のために決めたことですけど、自分のためだけではないなと今は強く感じています」。

迷いのない決断、挑戦よりも「進化をしに行く」

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