阪神から「帰ってくる気があるか」 打診した1本の電話…広島のスター“獲得”の裏側
2014年、川端順氏は新井貴浩復帰の道筋をつけ、オーナーに直談判した
広島・新井貴浩監督は現役時代、2007年オフにFAで阪神に移籍、2014年オフに阪神を退団し、広島に復帰した。元広島編成部長の川端順氏(徳島・松茂町議)は新井氏が出ていく時も、戻って来た時も知っている。とりわけ、再入団会見を行った日の表情は印象に残っているという。「会見などの前に中華料理を食べに行ったんだけど、新井は途中で気持ち悪くなって、トイレに行ってしまったんです」。超緊張のあまりだった。
川端氏は2014年オフの新井氏のカープ復帰に大きく関わった。「一番最初は阪神の関係者に『川端、新井ってどう見ている?』って聞かれたことでした。新井が帰ってくる7か月前だったかな」。それは、まだシーズンが開幕して間もない頃にあたる。「新井は性格いいでしょ、頑張っているでしょ」。そう答えると「『だったら、いい形で広島に帰してあげたほうがいいんじゃないか、新井の最後の花道として広島が欲しいということにできんかな』って。その話から始まったんです」。
この話を川端氏は広島・鈴木球団本部長に報告したが、その段階では進展することはなかった。「その時はまだ松田オーナーに話していなかったですけど、やはりFAで出ていった選手に、オーナーだって帰ってこいとは言えないだろうとなって、その話は先延ばしとなったんです」。阪神関係者には「もうちょっと待ってください」と言い、川端氏の判断で「新井はあれだけ打った選手ですし、2000本(安打)も控えています。もし、何かあった時は一番にウチを考えて下さい」と伝えたそうだ。
実際、2014年の阪神・新井は厳しい立場に追い込まれていた。開幕から代打中心に起用され、力を発揮できない日々が続いた。2005年には43本でホームラン王に輝いた大砲が、自己ワーストの3本塁打で終わった。もはや阪神に居場所がない雰囲気さえ漂っていた。そんな中で川端氏は「思い切ってオーナーに新井を獲りたいと言いにいった」という。「僕は怒られると思った。でも『うん、ええよ』って言ってくれたんです」。年俸の大幅ダウンが条件ながら、獲得OKとなったのだ。