阪神から「帰ってくる気があるか」 打診した1本の電話…広島のスター“獲得”の裏側

広島で選手・指導者として活躍した川端順氏【写真:山口真司】
広島で選手・指導者として活躍した川端順氏【写真:山口真司】

再入団発表会見前、昼食の際に新井監督はトイレに駆け込んだ

「阪神の編成の方に電話したら『直接、新井に話して』と言われたので、電話した。『帰ってくる気があるか』と言うと『ありがとうございます』って。後は(球団本部長の)鈴木さんが電話してくれた」。2014年11月14日、新井氏の再入団発表会見が行われた。「その日の午前中にユニホームの採寸をして、昼食後、オーナーに挨拶、それから記者会見というスケジュールだった」。その昼食の時に新井氏はトイレに駆け込んだのだった。

「5000円くらいの高いランチ。『うまいなぁ、お前のおかげでええもの食わせてもらうわ』って僕は食べていたんですけどね。新井は『僕って、ああいう形で出ていったじゃないですか。申し訳なくて、食べたものが喉を通らない』って言ってました。オーナーに会う前だったから緊張していたんだと思う。おそらく、トイレで吐いたんじゃないかな。オーナーへの挨拶が終わった後は本当にホッとしていましたよ」。超真面目な新井氏らしいし、そんな実直な性格が広島復帰につながったとは言えるだろう。「カープはまず人間性を重視しますからね」と川端氏も話した。

「あの時、新井は『恐怖なんですよ、1打席目とか、守りに入った時に広島ファンから、どんなヤジが飛ぶか、心配なんですよ』とも言っていたけど、そんなことがないどころか温かかったよね。今のファンは本当に温かい。素晴らしいよね」

 カープ復帰後の新井氏は見事によみがえった。2016年には2000安打を達成、優勝にも貢献し、MVPを受賞した。そして今季からは指揮官として辣腕を振るっている。「新井とのこともいい思い出ですよ」。川端氏は、その姿をテレビなどで見るたびにうれしくなるし、応援している。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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