兄は阪神・近本を指導した名将 教師目指した元オリ監督に訪れた岐路「なんで僕に…」
兄・忠之さんは社高を初めて甲子園に導いた高校球界の名将
森脇氏は3歳上の兄・忠之さんの後を追うように社に入学した。「兄貴は社から大学に進んで体育教師になって、社の野球部監督を務めて、社の校長先生にもなったんですが、僕ももともとは体育教師になりたいと思っていたんです」。忠之さんは2004年春に社を初めて甲子園に導いた名将で、現在は神港学園野球部の総監督。社OBの阪神・近本は教え子だ。森脇氏が高校生の時、忠之さんは大学生。当時は兄と同じ道を進んでいくのだろうと当たり前のように考えていたそうだ。
プロ野球に関しては「王さん、長嶋さん、村山さん、吉田義男さんみたいな有名な方は知っていましたけど、強い興味はありませんでした」というが、そんな流れが変わり始めたのは高校2年秋の県大会。プロのスカウトを初めて意識したという。「当時の神戸市民球場。試合が終わって、球場を出た時に横浜のスカウトの方に『次も見に行かせてもらうね』と声をかけられた。その後、同じ日に、巨人のスカウトの方からも……」。
いろんな思いが交錯した。「その試合はピッチャーで先発していた。その時のバント処理とかの守備も評価されたんじゃないかと思いますけど、正直、なんで僕なんかに、と思いましたよ。まぁ同時に、ひょっとしたら、頑張ればプロ野球選手になれるのかなって思ったりもしました。子ども心にうれしいことではありましたけどね」。
年が明けて、他球団のスカウトも森脇氏を見に来るようになった。「肩は強かった。遠投は正直好きでした。125メートルは投げていましたからね。でも遠投競争とかあるわけではないし、自分のチームの中でも特別違うものを見せつけていたわけではなかったんですよ」。困惑半分、うれしさ半分。そんな日々がさらに続いた。「ドラフト2位にもびっくりしました。本当に驚くことばかりだったんです」。思ってもいなかった森脇氏のプロ野球への道はそうして切り開かれていった。
(山口真司 / Shinji Yamaguchi)