緊急事態救う復活左腕「風景になじんできた」 原監督も手応え…虎追撃へ“地力証明”
戸郷は今季最多タイとなる143球を要しながら“粘り”の8回1失点
■巨人 2ー1 阪神(30日・東京ドーム)
巨人は6月30日、本拠地・東京ドームで行われた阪神戦に2-1で勝利。同点で迎えた延長10回に、岸田行倫捕手が代打サヨナラ1号ソロ。連敗を3で止め、セ・リーグ4位ながら首位の阪神との差は4.5ゲームに接近した。試合前には守護神の大勢投手が出場選手登録を抹消されたが、先発の戸郷翔征投手は今季最多タイの143球を要しながら8回8安打3四球1失点に抑える“粘投”。復活左腕・中川皓太投手も好救援し、勝利を呼び込んだ。
出端をくじかれた。戸郷は先発予定だった27日・ヤクルト戦が雨で流れたこともあって、中15日のインターバルを置いての登板。初回先頭の近本光司外野手に、カウント3-1から外角高めのストレートを左中間席へ放り込まれ先制点を許すと、その後も2回以外は毎回走者を背負った。原辰徳監督は「久しぶりの登板で体はフレッシュ。逆にそれで、前半は空回りした感じ」と評した。
1点ビハインドの3回にも、1死一、二塁のピンチに陥ったが、4番の大山悠輔内野手を148キロの速球で空振り三振。続くシェルドン・ノイジー外野手もストレートとフォークでカウント2-2と追い込み、外角低めのスライダーを振らせて三振に仕留めた。「ゲームそのものは完全に相手のペース。土俵際で粘りながらという状況でした」と原監督。追加点を阻んだことが、4回の大城卓三捕手の同点タイムリー、10回の岸田の1発へとつながった。
戸郷にとって143球という球数は、9回2失点完投勝利を挙げた5月9日・DeNA戦に並ぶ今季最多。5年目を迎えたプロ生活の中でも、2020年11月3日・広島戦の146球に次ぐ。それでも指揮官は「私や阿波野(秀幸投手チーフ)コーチには、ややブレーキをかける必要があるのかなという思いもありましたが、本人はそういうものを微塵も見せなかった」と若き大黒柱の気迫に賭けた。勝利投手にこそなれなかったが、4月26日・阪神戦以降9戦負けなし(6勝)の安定感は、チームにとって何よりも心強い。
怪我から“復活”した中川は10試合連続無失点「自信が戻ってきた」
一方、同点の9回は2番手で登板した中川が3人で片付け、これで10試合連続無失点。腰痛で昨シーズンを棒に振り、オフにはいったん育成選手となったが、5月に支配下に復帰。じわじわと本領を発揮しはじめた。原監督も「自信が戻ってきたと思います。自分の役割、風景というものになじんできたのではないでしょうか」と強くうなずいた。
抹消された大勢について、原監督は「長期ではないと思っておりますが、少々時間を要すると判断しました」と説明。セットアッパー的に起用されていたタイラー・ビーディ投手も、24日に特例2023の対象選手として抹消されており、リリーフ陣が一気に手薄になった格好だ。それでも戸郷がイニングを稼ぎ、実績のある中川が本領を発揮してつかんだ1勝は、地力を感じさせる。精神的支柱の坂本勇人内野手に続き、守護神まで戦線を離れた巨人だが、首位追撃の手は緩めない。