原監督の揺るがぬ信頼「得たものある」 キラーに敗戦も…育成出身24歳へ期待
“負けて学ぶ”ことの大切さ
■阪神 3ー0 巨人(1日・東京ドーム)
大きく成長を遂げる1日にしたい。巨人は1日、本拠地・東京ドームで行われた阪神戦に0-3で敗れた。“天敵”の阪神先発左腕・伊藤将司投手に7回まで4安打無得点に抑えられ、今季7度目の完封負けを喫した。選手たちにとっては“負けて学ぶこと”の多い試合となった。
巨人にとって、この試合のキーポイントは「伊藤将対策」だった。伊藤将がプロ1年目の一昨年こそ、5試合(先発は4試合)に対戦して3勝1敗、対戦防御率4.67だったが、昨年は2度の完封負けを含め3戦3敗、計24イニングでわずか1点しか取れなかった。今季も4月27日の対戦で、2安打無四球で完封負けを食らっていた。
チームは精神的支柱の坂本勇人内野手が怪我で出場選手登録を抹消中。代役の遊撃手として成長が期待されるドラフト4位ルーキーの門脇誠内野手、高卒3年目の中山礼都内野手はいずれも左打者。そこで、右打者でパンチ力のある北村拓己内野手が「8番・遊撃」で今季2度目のスタメンに抜擢された。
“代役”の北村に、勝敗を左右する場面で打順が回ってきた。1点を追う5回、先頭の中田翔内野手が四球を選ぶ。結果的にこの試合で唯一、巨人の先頭打者が出塁した場面だった。ただ、続く北村はカウント1-2から真ん中低めにカットボールに反応し、ニゴロ併殺に倒れた。
試合後、原辰徳監督は報道陣から併殺について問われると「まあまあ、彼にあまり(責任を)背負わせてもね……」とした上で「でも、なんて言うかな。(北村)本人にとって悔いのない打席だったのかどうかは、本人のみぞ知る。1ストライク、2ボールというカウントだったことを、本人はどう考えているかというところでしょうね」と言及した。
結果論ではなく、まだ1球見逃せる状況で、果たして狙いを定めた球種だったのか。手元で変化するボールに反射的に手を出してしまったのではなかったのか、自問自答を求めた。
繰り返すトライアンドエラーで底上げ
原監督は、抜擢した若手が好機に凡退したり、あるいは滅多打ちされたりしても、1度の失敗で見切りをつけることはない。むしろ「やり返して来い」とばかりに、すぐにセカンドチャンスを与えることが多い。北村は7回にも2死一塁で3打席目に立ち、カウント1-1から伊藤将のチェンジアップに食らいついたが、左飛に終わった。成長の糧として、忘れられない試合になったかもしれない。
一方、1点ビハインドのまま迎えた9回の守りでは、5月27日の阪神戦以降、11試合連続無失点の菊地大稀投手が登板。2死三塁のピンチを背負い、シェルドン・ノイジー外野手に真ん中高めの147キロの直球を中前適時打され、久々の失点を喫した。すると、原監督は少し笑みを浮かべながらマウンドへ歩み寄り、菊地の肩を抱いて何か語りかけてから、左腕の横川凱投手へとスイッチした。
菊地は育成選手として入団したプロ2年目の24歳だが、昨年の4月に支配下登録を勝ち取った。原監督が将来性を高く評価し、重要な場面で起用し続けている右腕。指揮官は「成長株ですから、いい場面で1点は取られましたけれど、何かまた得たものはあると思いますよ」とうなずいた。
20歳の秋広優人内野手が3番に定着するなど、巨人が世代交代期にさしかかっていることは間違いない。監督通算17年目で60代半ばを迎えた原監督は、トライアンドエラーを繰り返しながら、戦力を底上げしていく覚悟のようだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)