場内騒然“送りバント指令”の裏側 秋広の本塁打につながった原監督の布石
「シチュエーション、風景を変えさせた」
■巨人 4ー0 広島(11日・東京ドーム)
セ・リーグ4位の巨人は11日の広島戦(東京ドーム)に4-0で快勝。3位の広島に0.5ゲーム差と肉薄した。相手先発で防御率1点台の左腕・床田寛樹投手に、ソロ本塁打3発を浴びせ攻略。その裏側には、原辰徳監督が初回に置いた“布石”があった。
原監督は初回、1死から丸佳浩外野手が左前打で出塁すると、3番の秋広優人内野手に送りバントを命じた。4番の岡本和真内野手が好調とはいえ、既に1死だっただけに、意外な策に見えた。秋広は初球の内角高め速球を三塁手の前へ転がし、丸を二塁へ進めてプロ初犠打をマーク。結果的には、岡本和が四球で歩いた後、大城卓三捕手が右飛に倒れ、先制点にはつながらなかった。
原監督は「このところ非常に重い展開の試合が多かったので、少し戦い方を変えてみようという考えが、自分の中にありました。秋広もちょっとここのところ、なかなか(勝負どころでヒットが)出ていなかったので、シチュエーション、風景を変えるとか、(送りバントを命じた理由には)いろいろなものがありました」と説明。「よく決めてくれたと思います」とうなずいた。
巨人は試合前の時点で、広島には4勝8敗と負け越し。敵地マツダスタジアムでの前回3連戦(6月23~25日)でも、大瀬良大地投手に7回無失点、2年目左腕の森将平投手に5回2失点と抑えられ、1勝2敗で負け越していた。その後、首位・阪神との3連戦(6月30日~7月2日)では3試合で計5得点と打線が湿り、1勝1敗1分。2位DeNAとの3連戦(7月7~9日)にも、今永昇太投手、東克樹投手の両左腕を打てず1勝2敗と負け越し、指揮官は上位相手に点が取れないことを気にもんでいたのだ。
一方、プロ初犠打を記録した秋広だが、送りバントを命じられたこと自体は初めてではなかった。6月9日のソフトバンク戦では初回無死一、二塁の場面で、初球から2球連続でバントをファウルにし、強攻に切り替えるも投ゴロ併殺打に倒れている。原監督はこの時「秋広はホームランもヒットもバントも、今はまだやらなきゃいけませんね」と苦言を呈していた。この日の送りバントにも、弱冠20歳の秋広に対する教育的な意味合いがあったのかもしれない。
「いいところでポン、ポン、ポンと出ましたね」
初回の攻撃で流れが変わったのか、2回には先頭の中田翔内野手が左翼席へ先制11号ソロ。3回には、秋広が送りバント後の2打席目に右中間へ6号ソロ。5回には丸が右翼席へ11号ソロを放ち、7勝を挙げている難敵・床田をマウンドから引きずりおろした。「いいところでポン、ポン、ポンとね、(本塁打が)出てくれましたね」。原監督は相好を崩して振り返った。
「彼(秋広)のホームランは、だいたいあそこ(右中間)に行くね。2メーター四方のところに」。原監督はジョーク交じりに、秘蔵っ子の本塁打の傾向も分析してみせる。“秋広ゾーン”といったところだろうか。
秋広はプロ1年目のオフから自ら志願して中田に弟子入りし、自主トレをともにしている。原監督は「昨日も食事をしたらしいね。いろいろなものを吸収しているのでしょうね。仲がよかろうが悪かろうが、打ってくれるのが一番いいですけどね」と笑わせた。
11日現在で、首位・阪神から4位の巨人までが4.5ゲーム差内にひしめく混戦。キャリア抜群の原監督が、あの手この手でチームを上向かせようとしている。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)