実感した“お化けフォーク”の浸透度 登板なくても…千賀滉大が初球宴で得た経験

メッツ・千賀滉大【写真:小谷真弥】
メッツ・千賀滉大【写真:小谷真弥】

カーショーにフォークの握りを聞かれるなど“投球談義”で交流

 メジャーリーグのオールスター戦が11日(日本時間12日)、マリナーズの本拠地T-モバイル・パークで行われ、ナ・リーグが3-2でア・リーグに辛勝。13年からの連敗を9で止めた。代替選手として急きょ参加が決まったメッツの千賀滉大投手に登板の機会は回ってこなかったが、球界を代表する投手たちと交流し球種の握りを教え合うなど、貴重な時間を過ごした。【シアトル(米ワシントン)=木崎英夫】

 登板間隔の理由から出場を辞退したカブスのストローマンに代わる追加選出が決まったのは3日前のことだった。吉報が届いたのは遠征地のサンディエゴ。「何も持っていなかったので。急いでとにかく準備しました」。オールスター恒例のレッドカーペットショーでは途中、ファンのサインにも応じ、ゆったりと歩を進めていった。

 試合前には3度のサイ・ヤング賞を手にする球界屈指の左腕・カーショー(ドジャース)からフォークの握りを聞かれ、千賀はカーブの握りを見せてもらうという交流があったことを明かした。独特の落ち方をする“ゴーストフォーク”の浸透度は高く「いろんな方に褒めてもらえたという感じです」。オールスターならではの意見交換を楽しんだ。

 開幕から16登板で7勝5敗、防御率3.31の成績を挙げ、リーグ10傑に入る119奪三振を記録。代替にふさわしい数字を残して、千賀は2023年の球宴に選出された。

「体が操れていない」と話した初登板からちょうど100日目

 思えば、その初めの一歩は、緊張からつまずきかけている。

 4月2日(同3日)。敵地マイアミでのデビュー戦後、初回のマウンドでの息づかいが伝わってくる言葉を並べた。

「体が操れていない自分がわかっていた。やっと1球が投げられるというのが僕の中ですごく強くて。本当に何年も待ったことですし。戦うということよりも心がどこかにあるのだろうという感じだった」

 愛知県立蒲郡高から2010年の育成ドラフト会議で、ソフトバンクから4巡目指名を受けて入団。年俸300万円に満たない育成選手から這い上がりエースの座に就いた。その起伏に富んだ道を歩いた百戦錬磨の右腕も、夢舞台初登壇では揺れる感情を制御できずフォームを乱した。

 あれからちょうど100日目。真夏を迎えたシアトルの地を踏みしめた。

 千賀は言った。

「改めてまた出たいと思いましたし、今年は選ばれるよね、と言われるようなシーズンを、来年以降から成績を上げてまた来たいなと改めて思いました」

 メジャーで、千賀は千賀になっていくための1日をまた積み上げた。

(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY