「とことん守備を突き詰めよう」 ミス連発で一念発起…名手・源田を育んだ2年間
源田はトヨタ自動車1年目の都市対抗予選でミス連発…本大会は控えだった
14日に幕を開けた第94回都市対抗野球大会。全国から集まった32チームが社会人野球の頂点を目指して熱戦を繰り広げている。パ・リーグでも現在、多くの社会人出身選手が活躍しているが、今回は球界随一の名手、西武・源田壮亮内野手にトヨタ自動車在籍時の思い出を聞いた。
愛知学院大学から2015年にトヨタ自動車硬式野球部に入社した源田。進路を決めるにあたり、自身の“トヨタ入り”の希望が強かったという。「大学時代に試合は何度もしましたし、有名なチームという印象でした。野球を続けたいと思っていたので、大学3年生頃からトヨタでやりたいという話を大学の監督にして、何度かトヨタの練習に参加し、売り込みに行きました」と振り返る。
「トヨタのチームメートは学生野球の雑誌とかで見るような人ばかり。僕は甲子園に出ていなければ、東京六大学や東都大学などでもやってないですし、スター街道を走ってきた人とはちょっと違ったので、最初はやっぱり『みんなすげえな』『すごいチームに入っちゃったな』というのが(心情として)大きかったです。すごいメンバーの中でどうやったら試合に出られるかなと考えていました」
2014年日本選手権大会で優勝したトヨタ自動車。源田は入社1年目の都市対抗野球大会予選で守備のミスを連発、本戦では補強選手がショートのスタメンとなり、チームは3回戦で敗れた。源田も危機感を覚えた。
「大学までずっとレギュラーで出ていたので、それまでは試合に出て当たり前のような感覚だったんです。トヨタに入って悩んだ時に、強みを伸ばすという考え、つまり『悪いところを改善するより、いいところを伸ばしていこう』と(トヨタの首脳陣が)話してくれて。それでとことん守備を突き詰めようとなりました」
辛酸を舐めた都市対抗から一念発起。1年目の秋頃から乗田貴士コーチ(当時)と、全体練習後にマンツーマンで守備練習を行い、ひたすら一緒にボールを追いかけた。
2年目は予選から無失策…本大会で優勝に貢献&優秀選手賞を受賞
地道に蒔いてきた努力の種は、2年目に開花する。2016年の都市対抗では予選から無失策。本大会は全5試合に「9番・遊撃」で出場し、安定した守備を見せた。さらに決勝では2安打と打撃でも貢献。チームを都市対抗初優勝に導き、自身も優秀選手賞に選ばれた。
「2年目にスタメンで出られた時のうれしさをすごく覚えています。でも思い出っていうと、準決勝で高熱出したんですよ。試合中から寒気がしていて、試合終わって病院行って、点滴打って……幸いすぐに熱は下がりました。つらいハプニングではあるのですが今となってはそれも思い出です。
楽しかったことも。応援の盛り上がりが印象に残っています。決勝戦は相手が日立(製作所)で、オレンジ色に球場が染まって『ああすごいな』『この時間が長く続いてほしいな』と思っていましたね」
敵軍の応援も自分のエネルギーに変えられる強心臓ぶり。当時から大舞台向きだったのかもしれない。「トーナメント戦なので、負けたら終わりなのが143試合あるプロ野球とは違うところです。1試合で全て出しきるプレー、大ベテランの人も泥だらけになりながら戦う姿、1球の重み、そういう緊張感は観ている方にも伝わると思います」と語る。
そして、「あとは応援。各チーム工夫を凝らした応援は見ていて楽しいと僕も思うので、初めて都市対抗野球を見る方もそういうところで楽しさを見出していただければいいのかなと思います」。名手が育まれた都市対抗。トヨタ自動車で過ごした2年間はかけがえのないものだったようだ。
(「パ・リーグ インサイト」編集部)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)