最も避けるべきは経済&精神的な負担 発足2年で40人超…選手不足と無縁の学童チーム

東京都江東区で活動する「Kincon」の代表・佐藤輝彦さん【写真:羽鳥慶太】
東京都江東区で活動する「Kincon」の代表・佐藤輝彦さん【写真:羽鳥慶太】

東京都江東区の「Kincon」は親子2人から1年半で選手が40人に

 親子2人で立ち上げてから2年足らずで、40人を超える小中学生がプレーするようになったチームがある。東京都江東区で活動する「Kincon」だ。代表の佐藤輝彦さんは、近年叫ばれる少年野球人口の減少を「あまり感じたことがない」という。「野球をやりたい子は、たくさんいます」。そうした子どもたちが、続々と集まってくる秘密を追った。

「Kincon」は2021年の10月、新型コロナウイルスの拡大で日常生活が制限されていた真っただ中に産声を上げた。佐藤さんと、当時小学5年生だった長男の2人で立ち上げたチームだ。元々このエリアには、40年ほど活動した学童チーム「キングコンドルズ」があったが、10年ほど前に部員の減少や、サッカー人気の上昇で解散に追い込まれていた。

 佐藤さんは、旧チームの代表に許可をとって、チームを復活させようと動いた。親子2人だけの船出でも「子どもたちが集まるという自信はありました。息子の方が不安がって『パパ、人来るのこれ?』と言っていたくらいです」と当時を振り返る。

 なぜそう思えたのかといえば「野球が楽しいことさえ伝われば、子どもたちは間違いなく『一緒に行こう』ってなるからです」。実際、半年ほどで9人が集まり、単独で試合をできる規模になった。ただメンバーは5年生から1年生まで。体のサイズはバラバラで、整列すると「デコボコでしたね」と愉快そうに笑う。2022年4月2日、そのチームが初の対外試合で何と、勝利を収めたのだ。

「子どもたちはメチャクチャ喜んで、親の方も盛り上がって……」。方針は間違っていないと思わされた1日だった。

野球をする負担を減らす工夫も…会費は月3000円を維時

 技術は、子どもたちの“教え合い”で伸びていくという。そのために大切なのは、とにかく楽しく練習や試合に来られる環境づくりだ。「いつも子どもたちが真ん中」という考え方だけはぶらさない。その上で「監督コーチは怒鳴らない」「保護者の当番制は設けない求めない」「試合に出られない子を作らない」「子どもたちを威圧しない」というチームルールを定めている。

 また「少年野球にはお金がかかるのでは……」というイメージを払しょくしようと、月謝も3000円。この金額を維持するための工夫もしている。

「このチームはコロナの真っ只中に立ち上げました。その頃、子どもの顔を見ていると、何かが変わっていくのではと感じさせられました。『このままでは他人と関わらなくなる。まずいぞ』とね」

 スポンサー制度を始め、地域の小さな善意を集めた。最近行ったバーべーキュー大会にも85人ほどが参加し、協賛金を集めた。さらに「校庭って、この地域では無料で使わせてもらえるんですよ。そのあたりは徹底的に調べました。意外と知らない人も多いと思います」。

 精神的にも、経済的にも野球をする“負担”を減らした結果、ここまで人が集まるようになったのだ。

(羽鳥慶太 / Keita Hatori)

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