部員110人超の強豪が“保護者コーチ”を採用しないワケ 指揮官が重視する「積み上げ」

多賀少年野球クラブ・辻正人監督【写真:橋本健吾】
多賀少年野球クラブ・辻正人監督【写真:橋本健吾】

多賀少年野球クラブに、子どもがチームに所属する“パパコーチ”はいない

 少年野球チームに多い“パパコーチ”。ボランティアが前提となる少年野球の指導者において、保護者の協力は大きな力となる。ただ、問題点も少なくない。部員110人を超える滋賀・多賀少年野球クラブではパパコーチを廃止し、チームを卒団した選手の保護者がコーチやマネジャーを務めている。

 少年野球の監督やコーチは大半がボランティアで成り立っている。平日は仕事をして土日祝日は選手たちと一緒に汗を流す指導者たちに、感謝する保護者は多い。ただ、保護者から不満の声が上がるケースの1つが、自分の子どもを特別扱いする監督やコーチだ。実力に関係なく主力で試合に出場させる分かりやすい“優遇”もあれば、他の選手と比べて指導が厳し過ぎる場合もある。

 3度の全国制覇を果たし、現在は園児から小学6年生まで110人以上が所属する多賀少年野球クラブにも、かつては息子がチームに所属するパパコーチがいた。だが、現在は1人もいない。チームを率いる辻正人監督が理由を説明する。

「気を付けようと思っても、自分の子どもがチームにいたら他の選手との扱いは変わってしまいます。それに、パパコーチは息子の卒団と一緒にチームを去ってしまいます。自然なことですが、これではチームに積み上げができません」

監督やコーチの継続的な指導がチーム力向上に結び付く

 辻監督は監督やコーチが継続してチームに在籍することで、チーム力が上がっていくと考えている。そのため、多賀少年野球クラブには近江高校野球部時代の辻監督の後輩、公募による選考、子どもがチームを卒団した保護者らにコーチやマネージャーとしてのサポートをお願いしている。

「安定したチーム運営には、同じ方向を見て戦えるコーチやマネジャーの存在が不可欠です。私が声をかけるのは、子どもをしっかりと育てている保護者です。野球経験は全く関係ありません。柔軟な考え方ができる人、感情が安定している人、学ぶ姿勢がある人がチームの助けになってくれます」

 ボランティアで長期的に監督やコーチを任せられる人材の確保は難しいという声はあるだろう。ただ、自分の子どもを優遇するパパコーチへの不満を漏らしているだけではチームの状況は変わらない。

(間淳 / Jun Aida)

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