秋も春も県1回戦負け…古豪が強豪私学を撃破できたワケ 真冬の“痛すぎる”練習法

一関学院に勝利した盛岡商ナイン【写真:羽鳥慶太】
一関学院に勝利した盛岡商ナイン【写真:羽鳥慶太】

学校創立110年の盛岡商、昨夏甲子園出場の一関学院を破り準決勝へ

 第105回全国高校野球選手権の岩手大会は24日、盛岡市のきたぎんボールパークで準決勝を行う。ここに2002年以来、21年ぶりにコマを進めたのが学校創立110周年を迎える古豪・盛岡商だ。22日の準々決勝は、4-3で昨夏の甲子園に出場した一関学院に逆転勝ち。昨秋、今春と県1回戦負けという苦汁をなめてきたチームは、その裏で着々と“変身計画”を進めていたのだという。

 試合後の田中純一監督は「ホントに、ちょっと信じられないです」と目に涙を浮かべ、声を詰まらせた。3回に先制を許したものの、直後の4回に2死一、二塁から代打に起用した主濱瑛留内野手(3年)の中前適時打で同点に追いついた。6回に2点を失い1-3とされたが、7回に1点、8回に2点を奪っての逆転勝ち。「接戦で行けば、何が起こるかわからない」と説き続けてきた通りの試合展開となった。

 5回から、一関学院のマウンドには昨夏の甲子園でも投げた小野涼介投手(3年)が上がった。近年では珍しい本格的なアンダースローの右腕に、盛岡商の打線は当初手を焼いた。ただ1点を追う8回、1死二塁から「4番・右翼」の高橋遥都外野手(2年)が左翼線に同点二塁打。さらに一、三塁として「6番・左翼」の立花晋一郎外野手(2年)が左翼へ決勝犠飛。一気に攻略してみせた。

 高橋遥は、6回の小野涼との初対戦で二ゴロに倒れていた。「独特な球筋に、下からバットが出ていた」というのを「ボールを上から見る意識に変えたのが良かった」と胸を張る。8回には「みんなで上から打とうと話していました」と意思統一し、逆転劇につなげた。

昨秋から徹底した竹バットでの練習…殊勲の高橋遥「とにかく痛くて」

 盛岡商は昨秋、盛岡誠桜との県大会1回戦に1-6で敗れ、今春も県1回戦で盛岡大付に3-16で大敗していた。「打てなければ勝てないと思って、秋から継続して打撃の強化をしてきました」と田中監督。きちんとミートしなければ飛ばない竹バットを練習で使い始めたが、その中身が徹底していた。冬も雪の中、屋外で打撃練習を敢行。春を迎えてからも6月半ばまで、フリー打撃を竹バットだけで続けてきた。春はまだ、その途上にあったのだ。

 高橋遥は「芯に当たらないと全然飛ばない。冬はとにかく痛くて……。やる気が失せたりしたことも正直あるんですけど、みんな我慢してやってきた成果だと思います」と真っ直ぐな言葉で振り返る。

 6月中旬、選手たちは田中監督に「そろそろ金属バットで打ちたいんですが……」と申し出た。バットを変えてからの変化には驚いた。「多少詰まっても飛ぶようになっていました」と高橋遥。我慢しただけの効果があった。

 盛岡商は夏3回、春1回の甲子園出場がある。最初の出場は1936年(昭和11年)という伝統高だ。この夏の目標は、岩手大会のベスト8に置いていた。「ビックリしています」という高橋遥は「ここまで来たら何が起こるかわからない。上を目指してやりたい」と続ける。甲子園出場が叶えば、実に1975年夏以来48年ぶり。チームには今や、歴史を書き換えてやろうという意欲が満ちている。

(羽鳥慶太 / Keita Hatori)

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