サウナで「自然と涙が」 悩める選手救ったコーチの一言…3連覇目指す名門・横浜の「一丸」

一塁上からベンチを鼓舞する横浜・稲坂陽【写真:中戸川知世】
一塁上からベンチを鼓舞する横浜・稲坂陽【写真:中戸川知世】

3安打2打点の大活躍で決勝進出の立役者となった7番・稲坂

 第105回全国高校野球選手権の神奈川大会は24日、横浜スタジアムで準決勝が行われ、横浜が横浜商を12-2の6回コールドで破り、3大会連続の夏の甲子園出場に王手をかけた。勝利の立役者となったのが、「7番・三塁」で出場し3打数3安打2打点の活躍を見せた稲坂陽内野手(3年)だ。

 横浜は初回に2点を先制されるも、2回に打者12人の猛攻で一挙7得点を挙げ逆転。さらに3回、5回と先頭打者の稲坂の安打から、追加点を挙げリードを広げた。そして6回、3番・椎木卿五捕手(3年)の2塁打などで無死満塁のチャンスを作ると、「自分がやってやるんだ」と覚悟を決めて打席に入った稲坂が右中間を破る2点適時打を放ち、コールド勝ちを呼び込んだ。

 3打数3安打。名門・横浜の決勝進出に大きく貢献した稲坂だったが、ここまでの道のりは険しいものだった。昨年まで試合にすら出られなかった。外野手から三塁手へのコンバートを告げられたのは、今大会のわずか1か月前。「チャンスをものにするしかない」と覚悟を決めて練習に取り組み、初めて1桁背番号「5」を掴んだ。

 最後の夏にようやく得たレギュラーの座に、活躍したい気持ちは人一倍あった。しかし、今大会は2番で起用されたものの、5回戦までの4試合で13打数2安打。準々決勝、相洋戦の打順は8番に甘んじた。

準々決勝後にサウナで流した涙

 その準々決勝も3打数1安打と納得のいく結果ではなかった。ついに掴んだレギュラーなのに思うような活躍できていない。そんな自分が不甲斐なかった。準々決勝の後、心身ともに疲れをとる目的でチーム全員で銭湯に訪れた際、稲坂の目から悔し涙が溢れ出した。

「サウナの中で(高山大輝コーチから)『来いよ』と呼ばれて、『しっかりやってくれよ』と声をかけられて……。打てなくてチームに迷惑をかけていたので、自然と涙が出てきてしまいました。(2人きりで話すことは)普段ないので、特別な時間でした」

 涙に活躍を誓って迎えた準決勝当日は、「監督に朝から打撃投手をしてもらって臨みました」と気合は十分。結果は3安打2打点の大活躍だ。これには村田浩明監督も「あれだけ素晴らしい、彼らしいバッティングが出来て、これで大丈夫かな」と、不振を乗り越えた稲坂の成果を称え、笑顔を見せた。

 甲子園まであと1勝。「3連覇はみんないつも口にしている。スタンドのみんなの分まで絶対に甲子園に行く」と力を込めた稲坂。誓ったその瞳から名門・横浜の強さの理由が感じられた。

(木村竜也 / Tatsuya Kimura)

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